内因性幹細胞の動員、生着、心筋分化による重症心不全・再生療法の確立

文献情報

文献番号
200500960A
報告書区分
総括
研究課題名
内因性幹細胞の動員、生着、心筋分化による重症心不全・再生療法の確立
課題番号
-
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 浩二(独立行政法人国立病院機構京都医療センター臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 桑木 知朗(キリンビール(株)医薬カンパニー 開発本部 医薬開発研究所)
  • 米田 正始(京都大学大学院医学研究科心臓血管外科)
  • 森本 達也((財)生産開発科学研究所 心血管分子細胞生物学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、重症末期心不全に対する心筋再生療法を確立することであり、この目的を達成するため(1)慢性期における重症心不全に対してG-CSF、増殖因子を介した内因性幹細胞の動員、生着を促す再生療法の確立、(2)幹細胞の分化効率を上げるための心筋細胞への分化制御機構の解明、の2つに焦点をおいた。
研究方法
分担研究者の桑木らはG-CSFを用いた動員療法の有効性に関するメカニズムに関して検討し、米田らは増殖因子徐放化投与による幹細胞生着療法の確立を目指し、森本らは転写コアクチベーターp300による心筋細胞分化機構の解明を行った。
結果と考察
桑木らは主任研究者と共にBio14.6心筋症ハムスターの心不全末期において4μg/kg以下の低用量G-CSFの隔日投与が、心機能と生存率を改善することを見出し、この投与量では、好中球の高い増加は認められないと報告した。米田らは生体吸収性ゼラチン水和ゲルを用いた蛋白徐放システムを利用して 半減期の短いbFGF, HGF, IGF-1 などの細胞増殖因子を徐放化することにより、虚血性心筋症モデルや拡張型心筋症モデルにおいて心機能が改善し、さらに、細胞移植の効果も増大することを見出した。森本らはこれまで転写コアクチベーターp300の心筋細胞分化と肥大における役割に関して国際的業績を上げてきたが、今回心筋細胞において、ドキソルビシンはユビキチン依存性p300分解を増加させる一方、ユビキチン依存性p53分解を減少することによりp53を増加させ、心筋細胞アポトーシスを誘導することを見出した。
結論
血管再生療法は既にヒトにおいて臨床試験が行われているが、重症末期心不全に対する心筋再生療法は未だ確立していない。今回、我々は心不全末期から4mg/kg/day 以下のG-CSF週3日投与が、その心機能ならびに生存率を改善することを見出し、また増殖因子徐放化投与の有効性を動物レベルで証明した。心筋分化効率の上昇に向けた新たな知見も集積しつつある。本治療法を確立するためには幹細胞の動員、生着、分化を組み合わせた治療法の確立が必要であると考えられる。本研究グループは幹細胞の動員、生着、分化のそのそれぞれのステップにおいて新たなる知見を見出し、動物レベルにおいてこれらを組み合わせた治療法を検討し、重症末期心不全に対する心筋再生療法の臨床応用を目指している。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-