抗フリーラジカル療法を目指した基盤研究と創薬への応用

文献情報

文献番号
200500948A
報告書区分
総括
研究課題名
抗フリーラジカル療法を目指した基盤研究と創薬への応用
課題番号
H16-創薬-046
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
綱脇 祥子(国立成育医療センター研究所・感染防御研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 塩田 清二(昭和大学・医学部)
  • 松永 政司(日生バイオ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 食細胞以外にも活性酸素生成酵素が続々と発見され、今後、フリーラジカルに起因する病態の解明と抗フリーラジカル療法の確立は益々重要となるであろう。本年度は、1)冠状動脈血管内皮細胞の活性酸素生成系を解析し、2)神経ペプチド(PACAP)の脳虚血性神経細胞死抑制作用が、抗フリーラジカル作用に依るのか、3)核タンパク摂取が、フリーラジカルの関与する関節リウマチに対して有用であるか検討した。
研究方法
 1)ヒト冠状動脈血管内皮細胞からのH2O2生成はスコポレチン法を用いた。Neopterinは、H2O2測定4時間前に添加した。2)PACAP-KOマウスの血中酸化ストレスは、free radical evaluatorを用いて、活性酸素代謝物および生物学的抗酸化ポテンシャルとして測定した。脳内のO2-検出は、エチジウム法を用いた。3)リウマチ様関節炎を自然発症するHTLV-I Tgマウスに、無核タンパク餌(NF群)、核タンパク(NP群)を含有した餌を3ヶ月間摂取させた後、体重、関節厚、関節の組織学的変化、関節へのIgG沈着を解析した。
結果と考察
 1)川崎病は全身性の急性血管炎であり、患児の約10%が冠状動脈瘤を併発し突然死に至る場合もある。本研究では、ヒト冠状動脈血管内皮細胞が高いH2O2自発生成活性を有し、neopterinが増強することが分かった。この結果から、川崎病急性期に血中濃度が上昇しているneopterinが、血管内皮細胞のみならず、他の血管壁構築細胞にも酸化ストレスを与えて障害を起こし、血管炎、ひいては、動脈瘤を形成する可能性が考えられる。2)神経ペプチドPACAPの抗酸化ストレス作用を、PACAP-KOマウスおよびPACAPの投与により明らかにした。PACAPの抗フリーラジカル作用は循環レベルだけでなく脳内の組織レベルでも認められた。3)サケ白子由来核タンパクを摂取させたNP群は、ヒト関節リウマチの主徴である体重減少、関節肥大、関節でのIgG沈着、何れもNF群より抑制されていた。
結論
 川崎病発症期に血中濃度が上昇するneopterinがヒト冠状動脈血管内皮細胞の自発的な活性酸素生成能を増強した。PACAPが、脳海馬領域の酸化ストレス、加齢に伴う血中酸化ストレスを抑制した。核タンパクの餌負荷が、リウマチ様関節炎に対して改善効果を持つ事が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-