アルツハイマー病における新規創薬ターゲット検索のための、APP細胞内ドメインの機能解析

文献情報

文献番号
200500933A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病における新規創薬ターゲット検索のための、APP細胞内ドメインの機能解析
課題番号
H16-創薬-027
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中山 耕造(信州大学・医学部 人体構造学)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 進(国立病院機構・久里浜アルコール症センター)
  • 佐藤 俊孝(エーザイ株式会社創薬研究本部シーズ研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我々は、NotchやDeltaの解析結果から、γーセクレターゼによって、I型膜蛋白質の細胞内ドメインが切り出され、切り出された細胞内ドメインが核に移行して特定の転写因子に結合し、遺伝子の転写を調節するという新しいシグナル伝達様式を提唱している。生理的機能があまり解析されていないAmyloid Precursor Protein (APP)も同様のシグナル伝達の様式をとるという仮説のもと、APPの細胞内ドメイン(APPIC)がアルツハイマー病(AD)に関係している可能性を考えて、本研究をおこなっている。
研究方法
 アポトーシスの判定は、常法に従って、DNAラダーを検出することによっておこなった。また、タンネル法によって断片化した染色体をFITCで蛍光ラベルし、FACSを用いて定量した。
 H1 promoterによってsiRNAを発現する系を構築し、P19細胞に導入してE2F1の発現を阻害して、アポトーシスに対する影響を調べた。
結果と考察
(1)APPIC及び全長のAPPを強制発現するP19細胞を作製し、神経細胞へと分化誘導した。その結果、神経細胞への分化に伴って、APPICが核へ移行し、アポトーシスによる細胞死を誘導した。
(2)APPICに結合する転写因子として、E2F1を同定した。また、(1)で述べたP19細胞のアポトーシスの系において、siRNAを導入してE2F1の発現を阻害することにより、この細胞死を回避できることが明らかになった。E2F1は、細胞死を調節していることが知られている。これらのことから、核に移行したAPPICがE2F1に結合することにより何らかの変化がおき、細胞死を引き起こすと考えられた。
(3)ウエスタンブロッテイングにより、AD患者の脳では多量のE2F1蛋白質が存在する事を明らかにした。従って、前述した細胞レベルでの結果が、ADの病態を反映していることを期待している。
結論
 APPの細胞内ドメイン(APPIC)は、γーセクレターゼによって細胞膜から切り出され、細胞質へと放出される事になる。我々は、APPICが神経細胞に選択的に核へ移行することを示した。また、APPICは、転写因子E2F1に結合することによりアポトーシスを誘導することを示した。さらに、AD患者の脳に、多量のE2F1が存在することを示した。従って、このE2F1に依存したアポトーシスが、ADと関係している可能性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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