過食の病態関連因子の解明と抗過食薬の創薬探索に関する研究

文献情報

文献番号
200500932A
報告書区分
総括
研究課題名
過食の病態関連因子の解明と抗過食薬の創薬探索に関する研究
課題番号
H16-創薬-025
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
野々垣 勝則(東北大学大学院医学系研究科分子代謝病態学分野糖尿病代謝科)
研究分担者(所属機関)
  • 平岡秀一(明治製菓株式会社)
  • 熊野宏昭(東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学)
  • 大賀英史(国立健康栄養研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
セロトニン(5-HT)系薬剤の食欲抑制機序の解明から過食病態の解明、抗過食薬の創薬に役立つ標的遺伝子の探索を本研究目的とする。
研究方法
C57BL6Jマウスを用いて以下の実験を施行した。
1)食事による視床下部の5-HT2C受容体と5-HT1B受容体の遺伝子発現の変化
2)5-HT剤(mCPP, fenfluramine, fluvoxamine)の食欲抑制作用:薬物投与試験
3)視床下部のペプチドの遺伝子発現の変化:リアルタイムRT-PCRとDNAチップを使用
4)血中活性型とジスアシルグレリン、コルチコステロン濃度の測定:ELISAとRIAを使用

結果と考察
1) 空腹時に視床下部の5-HT2C受容体と5-HT1B受容体の遺伝子発現増強と共に血中活性型グレリン上昇を認めた。
2)mCPP, fenfluramineを投与すると、摂食抑制効果と活性型グレリン低下、コルチコステロン上昇、視床下部のPOMCとCARTの遺伝子発現が増加したが、視床下部のNPY, AGRP、グレリンの遺伝子発現は無変化だった。
3)フルボキサミンの投与では前記2)の反応は生じないが、5-HT2C受容体拮抗薬の前投与をすることで前記2)の反応の発現とPOMC遺伝子発現の上昇が生じた。
フルボキサミンの摂食抑制効果発現に関わる可能性のある遺伝子40種をDNAチップで同定し、その候補遺伝子の中からRT-PCRで摂食抑制効果に最も関与がある1つの標的遺伝子を同定した。
その新規候補遺伝子はレプチンや他の摂食抑制効果の生じるセロトニン製剤の投与時にも視床下部で発現が上昇していることを同定した。
結論
・5-HT系と活性型グレリンの間には負のフィードバック機構の存在が示唆される。
・5-HT2C受容体刺激薬による摂食抑制効果は、視床下部でPOMC,CARTニューロンの活性化を伴い、活性型グレリンの低下、コルチコステロンの上昇を来たす。
・フルボキサミン自体には、5-HT2C受容体刺激薬に見られるこれらの反応がいずれも認められず、フルボキサミンのこれらの効果の発現にはセロトニン5-HT2C受容体の不活化が必要とされることが示唆された。その際に摂食抑制効果の発現に関連して視床下部で変化する新規遺伝子40種をDNAチップで同定し、候補遺伝子の1つを確立できた。この候補遺伝子は抗過食薬の新規標的として期待できる。

公開日・更新日

公開日
2006-12-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200500932B
報告書区分
総合
研究課題名
過食の病態関連因子の解明と抗過食薬の創薬探索に関する研究
課題番号
H16-創薬-025
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
野々垣 勝則(東北大学大学院医学系研究科分子代謝病態学分野糖尿病代謝科)
研究分担者(所属機関)
  • 平岡 秀一(明治製菓株式会社)
  • 大賀 英史(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 久保木 富房(東京大学大学院医学系研究科)
  • 熊野 宏昭(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フルボキサミンなどSSRIの食欲抑制機序の解明から過食病態の解明、抗過食薬の創薬に役立つ標的遺伝子の探索を本研究目的とする。
研究方法
1) フルボキサミンの食欲抑制効果における5-HT2C受容体の役割の解明
2) フルボキサミンの食欲抑制効果における脳内メラノコルチン(MC)4受容体と3受容体の役割の解明
3) フルボキサミンによる血中活性型グレリン濃度変化の測定
4) リアルタイムRT—PCRを用いた視床下部の摂食関連ペプチドの遺伝子発現変化の測定
5) DNA chipを用いて標的遺伝子の探索
のための実験を行なった。
結果と考察
従来のセロトニン作動薬の報告と異なり、フルボキサミンには食欲抑制効果が認められず、その食欲抑制効果はセロトニン5-HT2C受容体の薬理学的な不活化が必要とされることは新規の発見である。研究代表者は、5-HT2C受容体遺伝子ノックアウトマウスを産生して、過食から中年期肥満を発症させることを報告している。臨床的に海外でもフルボキサミンは神経性過食症、無茶食い障害の治療に有効性が認められている。これからの結果から、フルボキサミンが有効となる過食病態とは、5-HT2C受容体の刺激伝達系に障害をもつ病態であると想定できる。更に、今回の研究から、その食欲抑制効果は脳内メラノコルチン系を介していることから、メラノコルチン系のシグナル伝達系が正常である必要もあることが推測できる。
結論
フルボキサミンそれ自体には食欲抑制効果が認められないが、セロトニン5-HT2C受容体の不活化により食欲抑制効果を発揮する。その食欲抑制効果は脳内メラノコルチン系を介し、末梢では血中グレリン濃度の低下が関与することが示唆された。フルボキサミンが有効な過食病態とは5-HT2C受容体のシグナル伝達障害があり、メラノコルチン系が正常な過食病態であることが推測された。一方、セロトニン2C受容体刺激薬であるmCPPは、視床下部のPOMCだけなくCARTの遺伝子発現を増強したが、NPY, AGRP, MCH, CRFの遺伝子発現には影響を与えなかった。更にmCPPはAymiceでも摂食抑制効果を発現したため、MC系はmCPPの摂食抑制効果に必須ではないことが示唆された。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500932C