細胞内エネルギー代謝制御分子の機能発現機構の解明と新規治療薬への応用

文献情報

文献番号
200500931A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞内エネルギー代謝制御分子の機能発現機構の解明と新規治療薬への応用
課題番号
H16-創薬-024
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
江崎 治(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 正英(アステラス製薬株式会社 創薬研究本部分子医学研究所分医第二研究室)
  • 服部 浩明(株式会社ビー・エム・エル 先端医療開発部先端医療開発2課)
  • 矢野 崇(持田製薬株式会社 開発研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病発症予防には、筋肉の糖の取込み及び脂質代謝を盛んにする必要がある。運動はミトコンドリアの合成を制御する転写因子PGC-1αを増加させ、ミトコンドリアにおけるβ-酸化を促進し、脂質代謝を亢進させる。PGC-1α過剰発現マウスを作製し、ミトコンドリアの機能及びエネルギー代謝について研究を行った。
最近、PGC-1αのホモログとしてPGC-1βがクローニングされた。PGC-1β遺伝子の上流配列から、その発現を制御するプロモーター領域の同定を試みた。
更に、人での影響を調べるため、ERR1、PGC-1β、FOXO1の変異と肥満との関連を調べた。
研究方法
1) PGC-1α過剰発現マウスの筋肉ミトコンドリアの機能分析
2) PGC-1β遺伝子上流領域の解析
3) 日本人でのERR1、PGC-1β、FOXO1の遺伝子多型分析
結果と考察
PGC-1α過剰発現によってミトコンドリアの脱共役呼吸が亢進し、ATP合成能が著しく低下し、筋組織にATP欠乏をもたらした。脱共役呼吸亢進に伴うATP量減少が筋萎縮を引き起こす病気にLuft病がある。PGC-1αがLuft病の原因遺伝子である可能性がある。
PGC-1β遺伝子の上流領域約1kbpにフォルスコリンとデキサメサゾンに対する応答性領域が存在することが示された。また基本転写反応に必要なプロモーター領域もこの領域内に存在することが明らかとなった。
ESRRA23はヒト肥満の遺伝的要因のひとつであると考えられた。ERR-PGC1βがヒトのエネルギー消費量を変動させ、その結果、肥満度に影響を与えていることが推察された。
結論
PGC-1α過剰発現によって増加するミトコンドリアは、脱共役呼吸が亢進しており、ATP合成能が著しく低下しているために筋組織にATP欠乏をもたらし、筋萎縮を引き起こしているものと考えられ、単にミトコンドリア数を増加させるだけでは糖尿病は予防できないことがわかった。
PGC-1βの遺伝子発現を誘導するフォルスコリンとデキサメサゾンに関して、PGC-1β発現調節に重要なプロモーター領域約1kbpを明らかにした。
ERR遺伝子の多型ESRRA23の2,3型を有する人のグループは2,2遺伝子型を有するグループに比べ、有意に太っていた(Body mass indexの値が大きかった)。この結果からESRRA23はヒト肥満の遺伝的要因のひとつであると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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