受精および初期胚発生における糖鎖の役割解析とその応用に関する研究

文献情報

文献番号
200500930A
報告書区分
総括
研究課題名
受精および初期胚発生における糖鎖の役割解析とその応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-023
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 北島 健(名古屋大学生物機能開発利用研究センター)
  • 木全弘治(愛知医科大学・分子医科学研究所)
  • 宮戸健二(国立成育医療センター研究所生殖医療研究部)
  • 安江 博(独立行政法人農業生物資源研究所ゲノム研究グル-プ)
  • 前田 浩(生化学工業株式会社中央研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
受精、初期胚発生ならびに器官形成過程における細胞表面糖鎖ならびにその関連分子が果たす役割を解析し、受精不全(不妊症)や不育症などの障害克服、幹細胞を用いた再生医療に応用可能な基盤情報を整備することを目的とする。
研究方法
SSEA-4結合蛋白の解析は質量分析で行った。
抗a-2,9-結合ポリシアル酸抗体作成とその応用によりウニやブタの精子を解析した。
ヒアルロン酸複合体(SHAP-HA)欠損マウスを用い、卵丘でのマトリックス分布解析や発現遺伝子解析、卵の対外受精率解析を行った。
受精膜融合でのCD9の機能解析のため可視化CD9卵の作成と観察等を行った。
ブタ精巣で3遺伝子のセンス・アンチセンス遺伝子発現を解析した。
結果と考察
ES細胞マーカーSSEA-4エピトープがラミニン結合蛋白上に存在し、細胞表面膜上に存在することを証明した。何らかの機能を保有する可能性が出てきた。
ウニ精子で硫酸化シアル酸(8-O-硫酸化N-アセチルノイラミン酸)含有新規糖鎖の構造が硫酸化シアル酸をもつ新規シアル酸重合体(a-2,9-結合ポリシアル酸)であり特定の蛋白と結合していることよりこの糖蛋白をフラジェラシアリンと命名した。
SHAP-HA複合体欠損マウスの卵丘細胞ではヒアルロン酸合成酵素HAS1の発現が見られない。SHAP-HA複合体欠損マウス卵の体外受精率は正常卵の20-30%に低下しているが、顕微授精では何ら差がなく、SHAP-HA複合体は精子の卵表面への結合に何らかの役割を発揮する可能性が示唆された。
受精膜融合に決定的な作用を持つCD9の機能にC末端の7アミノ酸が重要であることを明らかにした。また、可視化CD9を導入したマウス卵を用いた受精過程の観察により哺乳動物の受精過程での細胞膜相互作用を世界で初めて明らかにした。
ブタ精巣では、TAS1R3はセンス遺伝子のみ発現していたが、Prdx2およびNcam1ではセンス遺伝子およびアンチセンス遺伝子の両者が局在を違えて発現していることが判明した。
結論
初期胚マーカーSSEA-4エピトープが糖蛋白としても存在することを明らかにした。
哺乳類の精子上に硫酸化シアル酸をもつ糖蛋白の構造を解明した。
受精膜融合で重要なCD9のC末端アミノ酸を同定した。
ヒアルロン酸含有複合体は細胞外マトリックスの沈着にも重要であることが判明した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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