免疫グロブリン大量静注療法の作用機序解明と新しい治療標的分子の探索

文献情報

文献番号
200500929A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫グロブリン大量静注療法の作用機序解明と新しい治療標的分子の探索
課題番号
H16-創薬-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 淳(国立成育医療センター研究所・免疫アレルギー研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 寺井 勝(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
  • 平尾 豊(株式会社ベネシス研究開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、川崎病における免疫グロブリン大量静注(IVIG)療法の治療標的分子を同定して、その作用機序を明らかにするために、(1)IVIG療法前後での川崎病患者の末梢血中の免疫細胞の遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイで解析する、(2)発現が有意に変動した遺伝子を抽出し、蛋白レベルでの発現量を確認した上で、(3)これらの蛋白の発現量変化と川崎病患者の臨床経過との関連、および(4)免疫グロブリンによるこれらの蛋白の産生制御機構、について解析する、(5)川崎病でみられる血管透過性の著名な亢進に対する免疫グロブリンの作用について解析する、以上の5点を目的とする。
研究方法
川崎病急性期の患者から、IVIG療法の開始前と投与後間もない時期に静脈血を採取し、全血中の免疫細胞を対象としてDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。同年齢の発熱対照群の遺伝子発現プロファイルと比較して、川崎病急性期のマーカー遺伝子を抽出した。リアルタイムRT-PCRでマイクロアレイの結果を確認した。ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)および冠動脈血管内皮細胞(HCAEC)を用いて管腔形成能、透過機能、炎症性サイトカイン産生能を測定した。
結果と考察
(1)IVIG療法の前後で有意に変動する遺伝子群が多数見出された。統計解析により、川崎病急性期のマーカー遺伝子群192個を抽出した。(2)IVIG療法抵抗症例ではこれらのマーカー遺伝子群の発現抑制がみられなかった。(3)IVIG療法抵抗症例の血清によって惹起されるHUVECの細胞間透過性の亢進および管腔形成能の低下は、p38 MAPK阻害剤の添加により著明に軽減した。(4)高濃度のLPS刺激によるHCAECの炎症性サイトカイン産生亢進を抑制した。
結論
IVIG療法は川崎病患者の血球細胞の多彩な機能を抑制することが推察された。川崎病急性期に特異的なマーカー遺伝子群の中から、IVIG療法の治療効果判定に有用な臨床検査法を探したい。患者血清によって生じるHUVECの機能障害に、これらのマーカー遺伝子群およびp38 MAPK活性化がどう関連するか、今後検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-05-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-