遺伝子改変動物を用いた病態関連因子の解明と創薬への応用に関する研究

文献情報

文献番号
200500922A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子改変動物を用いた病態関連因子の解明と創薬への応用に関する研究
課題番号
H16-創薬-014
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田上 昭人(国立成育医療センター研究所薬剤治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 輿水 崇鏡(京都大学大学院薬学研究科)
  • 中村 靖夫(秋田大学医学部機能制御医学講座)
  • 松七五三 仁(アステラス製薬(株)御幸が丘研究センター)
  • 小嶋 正三(キッセイ薬品工業(株)研究本部)
  • 生垣 一郎(旭化成ファーマ(株) 研究センター)
  • 澤田 照夫(日本オルガノン(株) 学術情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,780,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
G蛋白質共役型受容体(α1アドレナリン受容体、バゾプレッシン受容体)の遺伝子改変動物の作製と疾患動物モデルを作出し、各受容体の生体内での生理、病態機能の評価と受容体特異的薬物の薬効評価を行う。
研究方法
α1アドレナリン受容体およびバソプレッシン受容体ノックアウトマウスを作成し解析を行う。さらに病態モデルを作製し、受容体特異的薬物の薬物効果・副作用について解析を行う。
結果と考察
α1アドレナリン受容体について各サブタイプ欠損マウスおよび二重欠損マウス、三重欠損マウスの作成に成功した。作成したマウスを用いて血管損傷モデルを作成し血管内皮の増殖における各受容体の機能解明を行ったところ、血管内皮の増殖にはα1Aおよびα1Bサブタイプが関与していることが明らかとなった。この結果より、α1選択的拮抗薬は、PTCA後の冠動脈内皮の肥厚の予防に効果が期待される。バゾプレッシン受容体変異マウスについて各サブタイプ欠損マウス(V1a, V1b欠損マウス)および及びV1ab二重欠損マウスの作成に成功した。バソプレッシンの心筋増殖に及ぼす効果については、V1a受容体が関与していることが明らかとなった。このことは、この受容体拮抗薬の開発により、肥大を起こす心疾患の予防薬治療薬として開発されることが期待できる。また、免疫抑制剤(サイクロスポリン、FK506)による高血圧や腎障害におけるバソプレッシンの作用についてノックアウトマウスを用いて検討を行ったが、ノックアウトマウスでもコントロールと同様の副作用の出現が見られた。この結果より、免疫抑制剤による高血圧・腎障害の発症にはバソプレッシン受容体拮抗薬は効果が期待できないものと考えられる。バソプレッシンがインスリン分泌に影響を及ぼすことについては、バソプレッシンがグルカゴン分泌にも関与していることが明らかとなった。血糖調節においてバソプレッシンは、V1b受容体を介してインスリン分泌・グルカゴン分泌調節を行いその他の因子とともに血糖の調節を行っているものと考えられる。内分泌系に及ぼすバソプレッシンの影響としては、脳下垂体のACTHやコルチコステロン以外にアルドステロン等の副腎皮質ホルモンや副腎髄質ホルモン分泌にも関与していることが明らかとなった。

結論
作成した遺伝子改変動物の解析により、新たな受容体の機能・薬物の効果が解明でき、ゲノム創薬において有用となる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-03
更新日
-