動脈硬化症と血栓症にかかわるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体(S1P3)の拮抗薬の開発

文献情報

文献番号
200500921A
報告書区分
総括
研究課題名
動脈硬化症と血栓症にかかわるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体(S1P3)の拮抗薬の開発
課題番号
H16-創薬-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
望月 直樹(国立循環器病センター 研究所循環器形態部)
研究分担者(所属機関)
  • 福原 茂朋(国立循環器病センター研究所循環器形態部)
  • 澤 洋文(北海道大学人獣感染症研究センター)
  • 小出 友紀(トーアエイヨー株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動脈硬化症は高齢化社会では不可避の病気であり、心血管疾患・脳血管疾患の原因として重要な病態である。これまでの血小板凝集抑制だけでは抑えきれない動脈硬化症を内皮細胞で発現するS1P受容体を制御することで動脈硬化症を治療するという考えでS1P受容体の作働薬・拮抗薬を創薬することを目的とする。
研究方法
(1)S1P3/EDG3受容体拮抗薬のスクリーニング(2)合成化合物・スクリーニングで抽出した化合物の検定:CHO-KI S1P1 S1P2またはS1P3株を使って薬剤の特異性を調べた。 (3)血管内皮細胞のS1P3受容体の作用についての検討:ヒト臍帯静脈血管内皮細胞をS1Pで刺激した場合のS1P3拮抗薬によるERK/MAPKの阻害効果について検討した。
(4) 動物個体でのS1Pの機能評価のためのマウスの作製(骨髄からの血管新生にかかわる細胞へのS1Pの関与をモニターリングするマウスの作製)
(5)S1P受容体ファミリー分子の組織発現
結果と考察
ID102455の分子官能基の共通性を検索条件(2次元構造検索)として、市販化合物データベースから、ID102455関連誘導体化合物群を購入し、スクリーニングに供した。さらに、これらの誘導体の構造活性相関情報を考慮して、S1P3受容体拮抗薬活性向上を指向した関連誘導体の合成を行った。その結果、S1P3受容体選択的拮抗薬として有望なTY-52156を見出した。TY-52156はS1P1/EDG1およびS1P2/EDG5受容体には顕著な拮抗活性を示さず、S1P3受容体に高い選択性を有していた。S1P3受容体拮抗薬の心臓直接的作用を評価すべく、左心室内圧(LVSP)、左心室発生圧(LVDP)、左心室一次微分値(LV±dP/dt)、心拍数(HR)および冠灌流量(CF)の測定を行った。(Langendorff標本(モルモット))その結果、直接的な冠血流増加作用が確認された。 経口吸収性評価にて高い生物学的利用率が確認され、経口投与可能な医薬品開発の可能性の曙光が認められた。今後動物個体を用いてS1P3拮抗薬が抗血管新生作用があるかどうかを検討する必要があると判断した。
結論
S1P3受容体拮抗薬としてTY-52156をスクリーニングによって見出した。本リード化合物はS1Pによる冠状動脈血流の低下作用を抑制することがわかった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-