創薬研究基盤としての新規発生工学技術の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500920A
報告書区分
総括
研究課題名
創薬研究基盤としての新規発生工学技術の開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松田 潤一郎(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 淳郎(理化学研究所 バイオリソースセンター)
  • 上田 正次((株)ワイエス研究所)
  • 竹入 修二(北山ラベス(株))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
8,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子改変動物や疾患モデル動物を簡便・迅速に作出するための各種の新規発生工学技術を開発し、創薬研究の共通基盤とすることを目的とした。
研究方法
高効率で簡便な遺伝子改変動物作出技術の開発のため、マウス初期胚の囲卵腔内へのレンチウイルスベクターの顕微注入法を検討した。雌マウス新生仔卵巣を、雄生殖幹細胞樹立用の培養液で培養し卵巣体細胞系幹細胞の樹立を試みた。核移植マウス胚を作成し、単一胚の遺伝子発現レベルをリアルタイム RT-PCRで解析した。自然交配および卵丘細胞核移植によって得られたウサギ胚盤胞からES細胞樹立を試みた。ラットES細胞樹立の試みとして、KSR(血清代換え培地)を用いた培地組成や培養法に検討・改良を加えた。
結果と考察
マウス囲卵腔内への注入により、透明帯除去胚との共培養よりも、低いタイターかつ少量のレンチウイルスベクターで遺伝子導入が可能である事が確認された。莢膜細胞も幹細胞が存在することを明らかにできた。卵子の体外発育では、卵子単独で透明帯形成や融合能獲得がなされることを初めて証明した。体細胞クローン胚の遺伝子発現解析では、2細胞期における胚特異的遺伝子のうち異常発現するものを明らかにした。ウサギ胚盤胞から、扁平な未分化細胞様のコロニーを得、ES様細胞を樹立した。ラットICM細胞の培地組成と培養条件を検討し、ICM細胞の明瞭な増殖を示す培養条件を得たが、安定したES様細胞は得られなかった。
結論
レンチウイルスベクターのマウス囲卵腔内への顕微注入法は、比較的容易な顕微操作で、低タイターかつ少量のウイルスベクターで遺伝子導入が可能であることが判り、簡便で効率の良い遺伝子改変マウス作成法として期待された。体外での卵子発育、新規幹細胞樹立、および核移植クローンの研究を進めた結果、新生仔マウス卵巣から精子との融合能を有する卵子を作出し、また莢膜細胞幹細胞の樹立に成功した。核移植クローン技術の開発では、初期胚でのクローン特異的に異常発現する遺伝子を同定した。極めて増殖力の高いウサギ ES 様細胞を樹立した。樹立困難とされているラットのES細胞を中心に多能性幹細胞の樹立を試みたが、ES細胞様コロニーが継代初期に認められるにとどまった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200500920B
報告書区分
総合
研究課題名
創薬研究基盤としての新規発生工学技術の開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松田 潤一郎(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 淳郎(理化学研究所 バイオリソースセンター)
  • 上田 正次((株)ワイエス研究所)
  • 竹入 修二(北山ラベス(株))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子改変動物や疾患モデル動物を簡便・迅速に作出するための各種の新規発生工学技術を開発し、創薬研究の共通基盤とすることを目的とした。
研究方法
高効率で簡便な遺伝子改変動物作出技術の開発のため、レンチウイルスベクターについてマウス透明体除去胚との共培養法と囲卵腔内への顕微注入法を検討した。マウスについて核移植クローン技術の改善、核移植胚の遺伝子発現などの検討や生殖幹細胞等樹立、さらに卵子の体外発育を試みた。自然交配および卵丘細胞核移植によって得られたウサギ胚盤胞からES細胞樹立を試みた。ラットES細胞樹立の試みとして、樹立するための培地組成や培養法に検討・改良を加えた。
結果と考察
マウス囲卵腔内への注入法は比較的簡便な顕微操作であり、透明帯除去胚との共培養よりも、低いタイターかつ少量のレンチウイルスベクターで遺伝子導入が可能である事が確認された。用いるドナー細胞の種類の検討や各種実験条件の適正化をすることにより核移植クローン技術を実用レベルまで上げ、体細胞クローン胚の2細胞期における胚特異的遺伝子のうち異常発現するものを明らかにした。卵子の体外発育では、卵子単独で透明帯形成や融合能獲得がなされることを初めて証明した。マウスの雄の生殖幹細胞が樹立され、さらに雌では莢膜細胞幹細胞の樹立に成功した。ウサギ胚盤胞から、扁平な未分化細胞様のコロニーを得、ES様細胞を樹立した。ラットICM細胞の明瞭な増殖を示す培養条件を明らかにし、ES細胞様のコロニーを得たが、安定したES様細胞は得られなかった。
結論
レンチウイルスベクターのマウス囲卵腔内への顕微注入法は、比較的容易な顕微操作で、低タイターかつ少量のウイルスベクターで遺伝子導入が可能であることが判り、簡便で効率の良い遺伝子改変マウス作成法として期待された。核移植クローン技術の実用化が一層進み、初期胚でのクローン特異的に異常発現する遺伝子を同定した。体外での卵子発育、新規幹細胞樹立、および核移植クローンの研究を進めた結果、新生仔マウス卵巣から精子との融合能を有する卵子を作出し、雄の生殖幹細胞の樹立、雌では莢膜細胞幹細胞の樹立に成功した。極めて増殖力の高いウサギ ES 様細胞を樹立した。樹立困難とされているラットのES細胞を中心に多能性幹細胞の樹立を試みたが、ES細胞様コロニーが継代初期に認められるにとどまった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500920C

成果

専門的・学術的観点からの成果
創薬研究の共通基盤としての各種の新規発生工学技術の開発を目指し、レンチウイルスベクターによる遺伝子改変動物作出技術、核移植クローン技術、マウス卵子の体外発育法、生殖幹細胞樹立、ウサギ生殖幹細胞・ES様細胞株の樹立、ラットのES細胞など有用幹細胞株の樹立法などに関して多くの成果が得られた。
臨床的観点からの成果
本研究は、遺伝子改変動物の作製のための新規発生工学技術の開発を進めることで、疾患モデル動物が迅速に作製されるなど、創薬研究の基盤を支えることが目的である。従って、直接臨床研究を行うものではないが、臨床応用を目指した動物実験のために有用な疾患モデル動物が迅速に、また多数開発されるための基盤技術を提供する点で成果が得られた。
ガイドライン等の開発
直接は該当なし。但し、本研究で行った実験動物を用いたウイルスベクターによる遺伝子導入法の開発やクローン動物作製、ES細胞を含む各種幹細胞に関する研究は、ヒトにおける遺伝子治療や再生医療のガイドライン策定のための貴重な基礎データとなることで、今後、大いに役立つものと期待される。
その他行政的観点からの成果
本研究で成果の得られた各種発生工学の技術開発は、画期的な医薬品開発など、我が国の創薬研究のための共通基盤となるものである。これらの技術開発により、疾患関連遺伝子を遺伝子操作して疾患モデル動物を作出し、新規医薬品の薬効や安全性の評価系として開発することが期待される。本研究により創薬研究が飛躍的に進展し、国民の健康、福祉の一層の向上に寄与することが期待され、行政的にも大きく貢献するものである。
その他のインパクト
各専門学会等での学術発表やシンポジウム発表、専門学術誌への掲載などにより成果の発表を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ono R, Nakamura K, Inoue K, etal.
Deletion of Peg10, animprinted gene acquired from a retrotransposon, causes early embryonic lethality.
Nat Genet , 38 , 101-106  (2006)
原著論文2
Kwon J, Mochida K, Wang Y.L, etal.
Ubiquitin C-terminal hydrolase L-1 is essential for the early apoptotic wave of germinal cells and for sperm quality control during Spermatogenesis.
Biol. Reprod. , 73 , 29-35  (2005)
原著論文3
Inoue K, Wakao H, Ogonuki N, etal.
Generation of cloned mice by direct nuclear transfer from natural killer T cells.
Curr. Biol. , 15 , 1114-1118  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-