呼吸器及び腸管粘膜免疫をターゲットとする新しいワクチンデリバリーの開発

文献情報

文献番号
200500910A
報告書区分
総括
研究課題名
呼吸器及び腸管粘膜免疫をターゲットとする新しいワクチンデリバリーの開発
課題番号
H16-創薬-056
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
竹森 利忠(国立感染症研究所・免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 五十君靜信(国立医薬品食品衛生研究所 他3名)
  • 横田恭子(国立感染症研究所・免疫部 )
  • 村上正裕(天藤製薬(株))
  • 大西和夫(国立感染症研究所・免疫部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
8,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
呼吸器及び腸管粘膜免疫を活性するワクチンデリバリーシステムを開発することを目的とする。またワクチン効果を増強させる手段の構築をはかる目的で、粘膜免疫の活性要因と、免疫記憶の誘導と維持に必要な分子を同定し、有効性、持続性に優れた新規ワクチン開発のための知識と材料を蓄積することを目的とする。
研究方法
新規デリバリーとしてモデル抗原OVA含有架橋型キトサン微粒子(CNP)を作製し、ラットに経口投与し腸管免疫賦活化能を検討した。今回はワクチンデリバリーとしての効果を上昇させるため、2次ターゲッティング機能を賦与した。一方、新規腸管デリバリーとして乳酸菌ベクターを開発するため基礎条件を検討した。更にBILLカドヘリンの免疫記憶に対する活性をBILL遺伝子欠損マウスと対照群とを免疫し免疫後のB細胞反応を解析することにより評価した。
結果と考察
呼吸器および腸管粘膜免疫をターゲットとするワクチンデリバリー開発のため、腸管デリバリーとして腸溶性シームレスミニカプセルに充填したキトサンナノ微粒子を作製し、ワクチンデリバリーとしての効果を上昇させるため、2次ターゲッティング機能を賦与した。この結果、免疫活性が増しIgM抗体産生のみならずIgA抗体産生量の増加が認められた。一方、細菌ベクターを用いた腸管デリバリー開発のために感染防御に有効なTh1誘導ドメインをプラスミドに導入し、SARS CoVのS,N蛋白をコードする遺伝子を組み込んだ。また腸管粘膜反応におけるBILLカドヘリンの機能を解析し、この分子が免疫記憶B細胞の産生に影響を与えることを明らかにした。
結論
経口微粒子ワクチンDDSに、さらに透過性や免疫系による認識や活性を高める機能性分子を組み入れることによって、ワクチン・デリバリーの基本機能であるDDSおよび免疫機能の強化・改良が可能であることが示唆された。この成果は、目標とする腸管免疫組織へのターゲッティング、抗原の提示、免疫細胞活性化の3段階を効率的に誘導可能とする、All-in-One型高機能性ワクチンDDSの開発実現のための基礎となる

公開日・更新日

公開日
2006-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200500910B
報告書区分
総合
研究課題名
呼吸器及び腸管粘膜免疫をターゲットとする新しいワクチンデリバリーの開発
課題番号
H16-創薬-056
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
竹森 利忠(国立感染症研究所・免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所・免疫部)
  • 村上 正裕(天籐製薬株式会社)
  • 大西 和夫(国立感染症研究所・免疫部)
  • 五十君靜信(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
粘膜免疫を活性するワクチンデリバリーシステムを開発することを目的とする。
研究方法
①腸管粘膜へのデリバリーシステム:腸溶性シームレスミニカプセルに充填した抗原タンパク質包含キトサンナノ微粒子を製造し、ラットに経口投与を行い免疫学的評価を行った。 ②呼吸器粘膜デリバリーシステム:インフルエンザウィルスNS1領域に外来性抗原を発現する組み換え型インフルエンザウィルスを作製し経鼻を介した免疫反応を解析した。 ③腸管粘膜デリバリー:弱毒サルモネラ菌を担体として用い、経鼻免疫と組合せあるいは単独で経口免疫による腸管でのキラーT細胞誘導に効果を解析した。
結果と考察
粘膜免疫をターゲットとするワクチンデリバリー(DDS)開発を目的として、OVA含有キトサンナノ微粒子を腸溶性シームレスミニカプセルに充填し作製し、経口投与すると抗OVA IgM抗体が産生され、粘膜免疫指向的な免疫賦活能を有することが明らかとなった。更に効果を上昇させるため、2次ターゲッティング機能を賦与すると、IgA抗体産生量の増加が認められた。一方サルモネラ菌にHIVgagを発現させ経口投与するとIgA抗体産生の誘導と粘膜部位T細胞活性に対するブースター効果を促すことを明らかにした。また腸管粘膜免疫をターゲットとする組換え乳酸菌ワクチンデリバリーの開発を行い、溶血活性を失ったリステリオリシンの組込みが対自然免疫反応を上昇することを明らかにした。有効性の評価のために感染防御に有効なTh1誘導ドメインをプラスミドに導入し、SARS CoVのS,N蛋白をコードする遺伝子を組み込んだ。一方、腸管上皮に発現するBILLカドヘリンがB1細胞の動態とサルモネラ菌の腸管細胞侵入に関与することが示唆された。更にこの分子が免疫記憶B細胞の産生に影響を与える可能性が示唆された。
結論
経口微粒子ワクチンDDSに、さらに透過性や免疫系による認識や活性を高める機能性分子を組み入れることによって、ワクチン・デリバリーの基本機能であるDDSおよび免疫機能の強化・改良が可能であることが示唆された。この成果は、目標とする腸管免疫組織へのターゲッティング、抗原の提示、免疫細胞活性化の3段階を効率的に誘導可能とする、All-in-One型高機能性ワクチンDDSの開発実現のための基礎となる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500910C

成果

専門的・学術的観点からの成果
呼吸器、腸管免疫のデリバリーシステム(DS)開発のため、腸管性シームレスミニカプセル(SC)インフルエンザ組み替えウイルス、弱毒サルモネラ菌、乳酸菌についての効果を検討した。いずれも免疫活性誘導能を示したが、弱く、しかしSCについては2次ターゲッティング機能の賦与で効果が上昇し、腸管デリバリーには2次、3次のターゲティングの重要性が示唆された。
臨床的観点からの成果
腸溶性シームレスミニカプセルを利用し、腸管粘膜免疫をターゲットとするデリバリーの基本構造を確定した。このデリバリーにより、モデル抗原に対するIgM抗体産生とともにIgA抗体の産生も認められた事から、この基本技術を基礎として粘膜免疫組織への優れたターゲッティングの技術改善に臨床的な有用な製品の作出が可能となる道筋をつけた。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
既知のワクチンにおいてその有効性の改善が必要なものが多い。病原体による感染は粘膜を介する事が多く、この観点から粘膜免疫を直接賦活するワクチンの開発の必要性がある。本研究はこの問題に新たな方法を用いてアプローチし、最終的な確立はまだ遠いいものの、いくつかのアプローチを提示し、今後の実用化に向けた情報を提供した。
その他のインパクト
免疫担当Bリンバ球と腸管上皮に発現するBILLカドヘリン分子遺伝子がB1細胞の動態とサルモネラ菌の腸管細胞侵入に関与することが示唆された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohnishi,K., F. Melchers, Fujii H. et al.
Lymphocyte-expressed BILL-cadherin/cadherin-17 contributes to the development of B cells at two stages.
Eur. J. Immunol. , 35 (3) , 957-963  (2005)
原著論文2
Cheun HI, Kawamoto K., Igimi S., et al.
Protedtive immunity of SpaA-antigen producing Lactococcus lactis against Erysipelothrix rhusiopathiae infection
J Appl Microbiol. , 96 , 1347-1353  (2004)
原著論文3
Katsueki Ogiwara, Noharu Takano, Masahiro Murakami et al.
Gelatinase A and membrane-type matrix metalloproteinases 1 and 2 are responsible for follicle rupture during ovulation in the medaka.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA (PNAS), , 102 (24) , 8442-8447  (2005)
原著論文4
Cheun HI, Kawamoto K., Igimi S. et al.
Protective immunity of SpaA-antigen producing Lactococcus Iactis against Erysipelothrix rhusiopathiae infection
J Appl Microbiol. , 96 , 1347-1353  (2004)
原著論文5
五十君静信
乳酸菌組換えとその応用
バイオインダストリー , 22 (1) , 38-45  (2005)
原著論文6
村上正裕, 下田浩, 谷口正和 et al.
消化管虚血再還流障害に対する薬効評価と有効製剤の探索
細胞 , 37 (5) , 204-206  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-