超難溶性薬物の効率的製剤化に非晶質の特異性を活用する技術とその評価法の確立

文献情報

文献番号
200500905A
報告書区分
総括
研究課題名
超難溶性薬物の効率的製剤化に非晶質の特異性を活用する技術とその評価法の確立
課題番号
H16-創薬-033
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 澄江(国立医薬品食品衛生研究所薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿曽幸男(国立医薬品食品衛生研究所薬品部)
  • 宮崎玉樹(国立医薬品食品衛生研究所薬品部)
  • 村主教行(塩野義製薬株式会社)
  • 林 隆志(塩野義製薬株式会社)
  • 高倉朝子(塩野義製薬株式会社)
  • 北村 智(アステラス株式会社)
  • 田中和幸(アステラス株式会社)
  • 平倉 穣(アステラス株式会社)
  • 水野真康(アステラス株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非晶質の特異性を活かして超難溶性薬物の効率的製剤化を実現することを目的とする。非晶質の特異性を決定する重要な要因であるダイナミクスを解析することによって非晶質の物理的状態の詳細を明らかにし、非晶質の特性を最適化する製剤技術の開発及びその評価法を確立する。
研究方法
(1)非晶質分散体における薬物分子(ニフェジピン、ニトレンジピン、ニルバジピン)および添加剤分子(HPMC)の運動性の関連を、スピン-格子緩和時間(T1)を指標として明らかにした。(2)また、分子内にカルボニル基を有する難溶性薬物(FK783)とPVPあるいはHPMCとの固体分散体について、マトリックス全体およびlocalな分子運動性をDSCおよびFT-IRを用いて評価し、結晶化のし易すさとの相関について検討した。(3)さらに、回転ディスク法による溶出試験によって固体分散体からの薬物(ニフェジピン)の溶出挙動に及ぼす添加剤(PVP、尿素、ニコチン酸アミド)の影響を検討した。
結果と考察
(1) フェノバルビタールおよびニフェジピンの結晶化はHPMCと固体分散体化することによって抑制され、非晶質薬物が安定化することが明らかになったが、安定化効果はPVP より小さく、薬物のlocalな運動性を抑制する作用が小さいためであると考えられた。非晶質ニルバジピンの結晶化速度は、同等のTgをもつニフェジピンよりも著しく遅く、マトリックスの運動性以外の要因が速度を支配することが明らかになった。(2)FK783の結晶化に対して、分子量の小さいPVPの方が結晶化抑制能が高いことが明らかになったことから、PVP末端の極性置換基が相互作用によって薬物のlocalな運動性を低下させ、薬物の結晶化を抑制することが示唆された。(3)ニフェジピン-PVP固体分散体において、ニフェジピン含有率が20%までの固体分散体ではニフェジピンが速やかに過飽和溶解したものの、薬物含有率30%の製剤では製剤表面で薬物が析出した。尿素あるいはニコチン酸アミドを添加することによって、薬物の溶出速度を高め、拡散層における非晶質薬物の結晶化を抑制できることを明らかにした。
結論
固体分散体中の薬物のlocalな運動性を抑制する添加剤を処方することによって、非晶質薬物の結晶化を遅延させ、安定な固体分散体を調製できることが明らかになった。また、固体分散体からの薬物の溶出速度を高め、拡散層における結晶化を抑制できる添加剤の組み合わせによって、溶出特性を改善できることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2006-05-22
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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