病態時の侵害情報伝達に関与するプリン受容体の機能解明

文献情報

文献番号
200500904A
報告書区分
総括
研究課題名
病態時の侵害情報伝達に関与するプリン受容体の機能解明
課題番号
H16-創薬-015
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
井上 和秀(九州大学大学院薬学研究院・医療薬科学部門・薬効解析学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 修一(国立医薬品食品衛生研究所・薬理部 室長)
  • 鳥光 慶一(NTT物性科学基礎研究所・分子生体機能研究部長)
  • 松岡 功(福島県立医科大学 薬理学講座 助教授)
  • 野口 光一(兵庫医科大学解剖学第二講座、神経解剖学 教授)
  • 中塚 映政(佐賀大学医学部生体構造機能学講座 助教授)
  • 加藤 総夫(東京慈恵会医科大学・総合神経生理学研究室 教授)
  • 安藤 譲二(東京大学大学院医学系研究科・生体医工学 教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
27,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性疼痛は発症機序が不明、有効な治療法が確立されていないために、多くの患者が苦しんでいる。我々は「脊髄内ミクログリアの活性化とそこでのATP受容体サブタイプP2X4の過剰発現と刺激が神経因性疼痛の発症と維持に関与する」ことを明らかにした(Nature 424, 778-783, 2003)。P2X4は鎮痛薬の新しいターゲットとして紹介された(Nature Reviews /Drug Discovery 2, 772-773, 2003)が、より本質的な多くの疑問点が残されている。本研究の目的は、このような不明の部分を明らかにし、難治性疼痛に有効な鎮痛薬創製のシーズを得ることにある。
研究方法
侵害情報の発生から認知までを、(1)末梢組織、(2)後根神経節ニューロン、(3)後根神経節ニューロン-脊髄後角ニューロン間のシナプス情報伝達、(4)脊髄後角ニューロンと上位中枢とのシナプス伝達、の4つに区分し、それぞれにおけるプリン受容体の役割を、脊髄損傷モデルあるいは慢性炎症モデルによる行動薬理学的手法、遺伝子分子生物学的手法(ノックアウト動物、アンチセンスDNA、siRNA、DNAチップ)、組織解剖学的手法、電気生理学的手法および in vitro 画像解析法で明らかにする。
結果と考察
P2X受容体は脊髄後角シナプス前およびシナプス後細胞に発現し、末梢からの痛覚情報を多彩に修飾している。慢性炎症などの病態時において後根神経節細胞や脊髄後角のP2X受容体の発現量は可塑的に変化するが、脊髄後角におけるP2X受容体の活性化は病態時における痛覚過敏に深く関与している。さらに、神経損傷時に脊髄内で増大する細胞外マトリックスのフィブロネクチンとミクログリアのβ1インテグリン相互作用が、P2X4受容体発現亢進に重要な役割を果たしている。この神経因性慢性疼痛動物モデルでは、扁桃体中心核におけるシナプス伝達の増強とその固定化が生じ、adenosine A1受容体によってその増強が特異的に抑制される。P2X4受容体は血管内皮細胞においてCOX2 mRNAを安定化させ、PGs産生に関与する。またP2X4は血管内皮細胞にかかる血流の変化の情報をキャッチして個体レベルでの循環系の生理機能の維持に関わっている。
結論
このように炎症性あるいは神経因性疼痛発症におけるプリン受容体の役割が明らかになってきた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
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