「HIV-1潜伏感染細胞からのウイルス再産生阻止薬の開発と応用」に関する研究

文献情報

文献番号
200500900A
報告書区分
総括
研究課題名
「HIV-1潜伏感染細胞からのウイルス再産生阻止薬の開発と応用」に関する研究
課題番号
H16-創薬-104
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 足立恭子(海洋バイオテクノロジー研究所)
  • 小柳義夫(京都大学ウイルス研究所)
  • 志村まり(国立国際医療センター)
  • 山下克美(金沢大学薬学部)
  • 池田和真(岡山大学医学部歯学部付属病院輸血部)
  • 胡桃坂仁志(早稲田大学理工学部)
  • 前田雅弘(免疫生物研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
16,830,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV-1アクセサリー遺伝子産物Vprの機能を明確にしながら、その阻害因子を海洋微生物抽出エキスライブラリー(以下MOEL)から同定する。Vprの機能としては、潜伏感染細胞からのウイルス再産生機能を中心に、神経細胞に対するアポトーシスや宿主細胞中のゲノムDNAに与える影響を調べる。
研究方法
エンドトキシンフリーのVprを潜伏感染細胞であるU1細胞に添加し、産生されるウイルス量を測定した。健常人由来末梢血単核球細胞(PBMC)を調整し、U1培養系に添加した。Vprにより末梢血細胞から産生されるサイトカイン産生に対する阻害効果を指標に、阻害因子をMOELから検索した。ヒットを示す検体に関して大量培養と部分精製を試みた。マウス神経細胞の一次培養系を用いて、ウイルス感染による分化阻害効果並びにVprの関与の有無を調べた。Vpr発現下でのDSBの有無を損傷の有無をパルスフィールド電気泳動法で解析し、RAD51、BRCA1等の遺伝子産物の挙動を解析した。
結果と考察
U1細胞に健常人PBMCとVprを加えて培養すると初めてウイルス産生が認められ、ある種のサイトカイン産生が誘導されることが判明した。MOELの約5000種類から固相法を用いたスクリーニングを行い。一種類の糸状菌由来エキス中に再現良く、Vpr機能を抑制する活性を見出した。神経幹細胞の培養系にHIV-1JRFLを感染させたマクロファージを共培養すると神経細胞の分化が抑制され、Vprが関与していることが示された。Vpr発現細胞のゲノムDNAが損傷されていることを認めた。それに伴って、リン酸化ATM、g-H2AX、Rad51及びBRCA1のフォーカス形成が認められた。

結論
Vprによるウイルス再産生はPBMCを介して間接的に誘導されること、ウイルス感染に伴って誘導される神経細胞の分化阻害にVprが関与していること、またVprによりDNA二重鎖切断が誘導されることが明らかとなった。本研究でVprがウイルス再産生に加えて、様々な形でエイズ病態を修飾している可能性が示された。抗Vpr因子化合物を用いることにより、ウイルス再産生やエイズ病態の改善が期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200500900B
報告書区分
総合
研究課題名
「HIV-1潜伏感染細胞からのウイルス再産生阻止薬の開発と応用」に関する研究
課題番号
H16-創薬-104
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 足立恭子(海洋バイオテクノロジー研究所)
  • 小柳義夫(京都大学ウイルス研究所)
  • 志村まり(国立国際医療センター)
  • 山下克美(金沢大学薬学部)
  • 池田和真(岡山大学医学部歯学部輸血部)
  • 胡桃坂仁志(早稲田大学理工学部)
  • 前田雅弘(免疫生物研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
潜伏感染細胞からのウイルスの再産生を誘導することが報告されているHIV-1アクセサリー遺伝子産物Vprの患者血中濃度を明らかにし、これと同程度の濃度のVprの機能を明確にしながら、その機能を阻害する因子を海洋微生物抽出エキスライブラリーから同定する。
研究方法
Vprに対する2種類の単クローン抗体を用いて免疫沈降-ウエスタン解析を行った。標準サンプルは、Vpr精製標品を健常人血漿に添加し、同様の解析に供した。Vprリコンビナント蛋白質は大腸菌を用いて発現・精製した。精製Vprを潜伏感染細胞であるU1に加えてウイルス産生誘導能を解析した。またこの培養系に健常人末梢血由来単核球(PBMC)を添加して、その効果を解析した。また、このようなVpr機能を阻害する因子を海洋微生物抽出エキスライブラリーから検索した。
結果と考察
患者検体14例中6検体で、分子量約14-kDaのVpr蛋白質が検出された。一方、健常人60名以上の検体では検出されなかった。Vprの濃度はおよそ10 ng/ml程度であった。Vprの検出の有無と血中ウイルス価には相関性を認めた。一方、白血球数及びCD4陽性T細胞数は逆相関を認めた。PBMCと潜伏感染細胞であるU1細胞の混合培養系にVprを加えると初めてウイルス産生が認められた。詳細な解析からVprがPBMCに作用してある種のサイトカインを産生させ、これがU1からのウイルス産生を誘導することが明らかとなった。この活性を阻害する検体が、約5000種類の海洋微生物抽出エキスライブラリーから一種類見出された。
結論
阻害因子探索を行う上で最も重要な要因であるVprの機能が本研究で明らかとなった。即ち、これまではVprが直接的に潜伏感染に作用してウイルス産生が誘導されるとされてきたが、VprはPBMCからのサイトカインの産生を介して、ウイルス産生を誘導することが明確になった。

公開日・更新日

公開日
2006-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500900C