LEE遺伝子群非保有型腸管出血性大腸菌の疫学マーカーおよび新規治療薬の標的となる病原性遺伝子に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
200500899A
報告書区分
総括
研究課題名
LEE遺伝子群非保有型腸管出血性大腸菌の疫学マーカーおよび新規治療薬の標的となる病原性遺伝子に関する基礎的研究
課題番号
H16-創薬-098
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫田 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血清群O157, O26またはO111以外に属するヒト由来の腸管出血性大腸菌(EHEC)は、その約40%がLEEと呼ばれる病原性遺伝子群を保有しないタイプ(LEE-negative EHEC: LN-EHEC)であり、それらが保有する病原性遺伝子については不明な点が多い。これまでの研究から、菌体同士が鎖状に繋がり、培養細胞へ強固に接着している(Chain-like adhesion:CLA)一群のLN-EHEC株の存在が明らかとなっており、今年度はこれらの株が保有する接着因子の同定と、その機能解析を行うことを目的とした。
研究方法
昨年度トランスポゾン(Tn)挿入変異によって得られた既知の接着因子をコードする遺伝子の突然変異体は、その後の解析から、CLAの表現型には関与しないことが判明した。そこで、トランスポゾンによるランダム突然変異を再度行い、約5,600株の中から、接着能を失った(CLAを示さない)変異体を数株単離した。トランスポゾン挿入部位をクローニングし、周辺の塩基配列を定法により決定した。当該遺伝子のクローンを運ぶプラスミドと完全欠失体を定法により構築した。
結果と考察
Tn挿入部位を含むオープンリーディングフレームは大腸菌の免疫グロブリン結合蛋白質(E. coli immunoglobulin binding protein A-F: EibA,C,D,E,F)や、Yersinia属で広く保存されている接着因子YadAと高い相同性を示すが、これまでに報告のない新規蛋白質をコードしていると予想された。そこで、この遺伝子をeibGと命名した。野生株を用いてisogenicな完全欠失体を作製したところ、HEp-2細胞への接着能を完全に失っていることが確認され、さらにこの表現型はeibGを運ぶプラスミドによって相補された。このeibGプラスミドをHEp-2への接着能を持たない大腸菌K-12由来株のMC4100に導入したところ、HEp-2細胞表面でCLAを示すと共に、IgGおよびIgAへ結合することが判明した。この結果は、この遺伝子が単独でCLAを担う接着因子であると同時に、免疫グロブリン結合蛋白質として機能していることを示すものである。
結論
1) 新規イムノグロブリン結合蛋白質であるEibGはCLA表現型に必須である。
2) EibGを発現させた大腸菌K-12のMC4100株はCLAでHEp-2細胞へ強固に接着する。

公開日・更新日

公開日
2006-03-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-