向精神薬のSNPs解析による有効性・安全性に関する研究

文献情報

文献番号
200500898A
報告書区分
総括
研究課題名
向精神薬のSNPs解析による有効性・安全性に関する研究
課題番号
H16-創薬-095
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 亮太(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第三部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
向精神薬の特徴として、患者によって治療への反応性が大きく異なり重大な副作用を生じる可能性が少なくないにもかかわらず、薬物選択の基準となる客観的な指標やエビデンスは殆どなく、医療者の「経験と勘」に基づいて行われていることが挙げられる。したがって本研究では、ゲノム情報を用いて、抗精神病薬、気分安定薬そして抗うつ薬の治療反応性と重大な副作用と関連する遺伝的要因について明らかにすることで、あらかじめ薬効や重大な副作用発現の予測を行い、オーダーメード医療の実現に向けた知見を得ることを目的とする。
研究方法
国立精神・神経センター武蔵病院と共同研究施設において、統合失調症、躁うつ病、うつ病における向精神薬の有効性や副作用などの薬物応答のデータを収集した。本研究は、国立精神・神経センター武蔵地区倫理審査委員会において承認を受けており、それに基づいて、試料提供者への説明とインフォームド・コンセントを行った。
結果と考察
向精神薬の有効性や副作用などの薬物応答は、精神疾患に関連する遺伝子において認められる可能性があることから、精神疾患に関連する遺伝子を同定した。統合失調症においては、神経発達に関与していると考えられているALK遺伝子が統合失調症と関連することを報告した(Am J Med Genet, in press)。双極性障害においてはBDNFの新しい多型を23個同定し、そのうちの一つが双極性障害と関連することとそのリスク多型の転写活性が少ないことを明らかにした(Mol Psychiatry, in press)。次に神経突起の形態制御に重要な役割を果たすRho GAPの一種であるGMIP遺伝子がうつ病との関連することを示し、うつ病のリスクアレルは転写活性が少ないことを明らかにした(Neurogenetics, 2005)。さらに躁うつ病に関連する小胞体ストレス関連分子であるXBP1遺伝子の機能的多型がリチウム維持療法の効果と関連することを明らかとした(Int J Neuropsychopharmacol, 2006)。
結論
向精神薬の有効性や副作用などの薬物応答に影響を与えると考えられる機能性精神疾患に関連する機能的遺伝子多型の同定とリチウムの維持療法の治療反応性とXBP1遺伝子多型の関連を示すことにおいて成果があった。これからリチウムの維持療法の治療反応性に関与する遺伝子多型や他の薬物応答に関連する遺伝子を見出すことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-03-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-09-02
更新日
-