文献情報
文献番号
200500897A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト胎盤組織を用いた薬物の胎児移行性及び胎児毒性の定量的評価
課題番号
H16-創薬-086
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
澤田 康文(東京大学大学院薬学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 大谷 壽一(東京大学大学院薬学系研究科)
- 堀 里子(東京大学大学院薬学系研究科)
- 辻本 雅之(九州大学大学院薬学研究院)
- 月森 清巳(九州大学大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
薬物の胎児毒性を評価する上では、その胎盤透過性、胎児移行性を評価することが必要不可欠である。
本年度は、ヒト胎盤灌流法により、各種非ステロイド性消炎鎮痛薬の胎盤透過動態やそこでの薬物輸送担体の関与を検討した。また、その結果を用いて、それら薬物の胎児移行と胎児の副作用の強度を予測することを試みた。また、胎盤組織における各種 MCTs アイソフォームの発現を確認した。OATP-D 及び OATP-E の安定発現細胞樹立を目的とした。さらに、OAT4の基質認識性を明らかにするため、OAT4と様々な構造を有する化合物との間の相互作用について検討した。
本年度は、ヒト胎盤灌流法により、各種非ステロイド性消炎鎮痛薬の胎盤透過動態やそこでの薬物輸送担体の関与を検討した。また、その結果を用いて、それら薬物の胎児移行と胎児の副作用の強度を予測することを試みた。また、胎盤組織における各種 MCTs アイソフォームの発現を確認した。OATP-D 及び OATP-E の安定発現細胞樹立を目的とした。さらに、OAT4の基質認識性を明らかにするため、OAT4と様々な構造を有する化合物との間の相互作用について検討した。
研究方法
ヒト胎盤灌流法では、情報に従い、ジクロフェナクの輸送を検討すると共に、乳酸の影響を検討した。胎盤組織等におけるMCTs アイソフォームの発現検討は、RT-PCR 法により行った。薬物動態モデルに基づき得られた動態パラメータを元に、母体にジクロフェナクまたはサリチル酸を投与した時の胎児血漿中濃度をシミュレーションした。OATP-D 及び OATP-E の安定発現細胞は、HEK-293細胞を親細胞として、常法に従い遺伝子導入を行いセレクションして樹立した。OAT4 の機能解析に関しては、HEK-OAT4細胞への基質の取り込みに対する、各種阻害剤の効果を検討した。
結果と考察
胎盤灌流実験の結果、ジクロフェナクの胎盤透過性はアンチピリンやサリチル酸と比較して小さかった。これは、ジクロフェナクの蛋白結合率が高いためと考えられた。灌流液中の乳酸はジクロフェナクの胎盤透過を有意に抑制した。胎盤組織におけるMCTs アイソフォームの発現が確認されたことなどから考えると、乳酸により MCT が阻害されたためかもしれない。。
モデルに基づきサリチル酸とジクロフェナクの胎児最高血漿中濃度を予測し、COX2阻害強度と比較したところ、安全係数はサリチル酸の方がジクロフェナクより高いと予測された。
HEK-OAT4の機能に影響を及ぼすさまざまな薬物を見いだし、中にはカルボン酸構造を有しないものもあった。
モデルに基づきサリチル酸とジクロフェナクの胎児最高血漿中濃度を予測し、COX2阻害強度と比較したところ、安全係数はサリチル酸の方がジクロフェナクより高いと予測された。
HEK-OAT4の機能に影響を及ぼすさまざまな薬物を見いだし、中にはカルボン酸構造を有しないものもあった。
結論
本研究により、胎盤における物質、特にアニオン性薬物の透過メカニズムが多角的に明らかになった。本研究のように、さまざまな実験系の特徴を活かした検討を行うことにより、胎盤における薬物の透過性を多面的に評価することが可能と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2006-04-10
更新日
-