可溶性ウイルス受容体等を利用した抗ウイルス剤の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500894A
報告書区分
総括
研究課題名
可溶性ウイルス受容体等を利用した抗ウイルス剤の開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-059
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田口 文広(国立感染症研究所ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 星野 洪郎(群馬大学医学部)
  • 柳 雄介(九州大学大学院医学研究院)
  • 森山 雅美(慶応義塾大学医学部免疫学)
  • 曽根 三郎(東レ株式会社医薬研究所)
  • 福島 正和(大鵬薬品工業株式会社製薬センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
可溶性ウイルス受容体や合成受容体ペプチドは、ウイルスの変異に拘わらずウイルスを中和するため、様々なウイルス感染症における有望な治療薬の候補である。本研究の目的は、これらの製剤によるウイルス感染防御法確立のための基盤的研究であり、ウイルスと受容体の相互認識機構の解明を行う。
研究方法
重症急性呼吸器症候群(SARS)原因ウイルス(SARS-CoV)の可溶性受容体(soACE2)をバキュロウイルスを用いて発現し、そのウイルス中和活性を検討した。麻疹の動物モデルとして、マウスSLAMのVドメインをヒトSLAMのVドメインで置換えた遺伝子置換マウスを作製し、麻疹ウイルス(MV)に対する感受性を検討した。HTLV-1感受性がヘパラン硫酸(HS)を受容体として利用するか否かに付いて、検討した。
結果と考察
バキュロウイルス発現soACE2は10-20nMの濃度で1中和活性を示し、抗SARS剤としての可能性が示唆された。麻疹動物モデルとして、SLAM遺伝子をヒトSLAM遺伝子で置換した遺伝子改変マウスを開発し、その感受性を解析した。作成したマウス由来の脾臓細胞はMV感染に対して感受性を示した。正常の遺伝子改変マウスではウイルス増殖は認められなかったが、inteferon 受容体ノックアウトマウスでは感染が認められ、麻疹の動物モデルとして期待される。HTLV-1感染に細胞表面のHSが関与している可能性が示唆されたが、HS発現細胞が全て感受精を示す訳ではなく、HTLV-1受容体として機能するためには、特異的な糖鎖構造の重要性が考えられた。

結論
SARS-CoV感染が可溶性受容体により防御されることが明らかとなり、抗ウイルス剤としての開発が期待される。MV感受性の遺伝子組み換えマウスが作成され、野生株MVを用いた感染実験による麻疹の発症機構解明が期待される。また、抗MV剤のスクリーニングに有用であり、抗MV剤開発の貴重な基盤的研究である。細胞表面にあるHSがHTLV-1受容体として機能することが明らかとなったが、HS全てが機能を有する訳ではなく、今後HTLV-I感染に関与するHSの特異的糖鎖構造についての検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-18
更新日
-