日本発の新しい抗パーキンソン作用薬ゾニサミドの臨床研究

文献情報

文献番号
200500885A
報告書区分
総括
研究課題名
日本発の新しい抗パーキンソン作用薬ゾニサミドの臨床研究
課題番号
H15-難治-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
村田 美穂(国立精神・神経センター 武蔵病院)
研究分担者(所属機関)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬総合研究科)
  • 近藤智善(和歌山県立医科大学医学部)
  • 戸田達史(大阪大学大学院医学研究科)
  • 南部 篤(自然科学研究機構生理学研究所)
  • 長谷川一子(国立病院機構相模原病院)
  • 服部信孝(順天堂大学医学部)
  • 野元正弘(愛媛大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主任研究者らが抗パーキンソン効果を発見したゾニサミド(ZNS)の臨床効果の確認とその機序の解明、神経保護作用の評価とその機序の解明、パーキンソン病(PD)関連病態への効果の探索を目的に研究を進めた。


研究方法
ZNSの臨床効果として長期試験の結果の再検討とFreezing of Gait Qustionnare を用いたすくみ現象への効果の評価を行う。
MAOA,Bの分布の異なるPDモデル動物に特異的MAOB阻害剤のselegilineとZNSを投与してドパミン代謝の違いを比較することで、ZNSのドパミン代謝への作用機序を、さらにMPTP サルを用いて淡蒼球内節(GPi)ニューロン活動に対するZNSの作用を明らかにする。
 培養細胞、モデル動物を用いて、ドパミン、MPP+による神経毒性に対するZNSの保護作用の評価とZNSのキノン体毒性に対する保護作用の作用機序の解明を行う。 
結果と考察
進行期PD患者で1年間観察しえた症例の85%が16週までに改善を認め1年後までさらに改善する傾向にあった。これまでの進行期患者を対象にした治験では6ヵ月以降症状が増悪しており、ZNSの神経保護作用を臨床的に示唆する結果と考えられた。L-dopa不応のすくみ足への効果は少数例での検討ではあるが進行性核上性麻痺患者で有用性を認めた。
ZNSはselegilineと異なり、種差を認めなかったことからZNSのドパミン代謝への作用はMAOB阻害作用とは異なることを明らかにした。
ZNSはPDで認めるGPiの異常神経活動を正常化する傾向を認めた。GPiの異常神経活動が振戦の原因と考えられており、L-dopa 不応の振戦、すくみ足などドパミン系のみの作用では説明不可能なZNSの効果に対応する機序である可能性がある。
ZNSはdopamine, MPP+に対しリン酸化PTENの発現増加を伴う、明らかな神経保護作用を示した。ZNSはキノン消去系因子への作用は乏しく、小胞外細胞質内の過剰ドパミンのメラニンへの強力な変換作用、グルタチオン代謝抑制作用がZNSのL-dopa誘発キノン体毒性に対する保護・抑制効果の主体であることを明らかにした。
結論
ZNSは高い抗PD効果を1年後まで経過と共により改善する傾向にあること、ドパミン系以外に淡蒼球神経活動の正常化が作用機序に関与すること、既知の薬剤とは異なる機序の強い神経保護作用をもつことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2006-04-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200500885B
報告書区分
総合
研究課題名
日本発の新しい抗パーキンソン作用薬ゾニサミドの臨床研究
課題番号
H15-難治-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
村田 美穂(国立精神・神経センター 武蔵病院)
研究分担者(所属機関)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬総合研究科)
  • 近藤 智善(和歌山県立医科大学医学部)
  • 戸田 達史(大阪大学大学院医学研究科)
  • 南部 篤(自然科学研究機構生理学研究所)
  • 野元 正弘(愛媛大学医学部)
  • 長谷川 一子(国立病院機構相模原病院)
  • 服部 信孝(順天堂大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 主任研究者らが抗パーキンソン病(PD)効果を発見したゾニサミド(ZNS)の臨床効果の確認とその機序の解明、神経保護作用の評価とその機序の解明、PD関連病態への効果の探索を目的とした。


 
研究方法
ZNSの抗PD作用及びPD関連病態に対する臨床効果、長期効果について自主研究及び開発元による大規模治験の再検討を行った。
 作用機序についてはモデル動物、培養細胞などを用い、生化学的、生理学的検討を行い、神経保護作用についてはドパミン、MPP+に対する神経保護効果、ドパミンキノンに対する保護効果とその機序について検討した。
結果と考察
 ZNSは進行期PDに対し、50mg/日1日1回投与でUPDRS III及びwearing-offとも著明な改善を得、しかも1年間観察しえた症例の85%が16週までに改善を認め、1年後まで経過とともに改善する傾向にあり、神経保護作用を臨床的に示唆する結果と考えられた。PD関連病態として、本態性振戦、L-dopa不応のPDの振戦、すくみ足restless leg syndromeについての効果を明らかにした。
ZNSは単独でチロシン水酸化酵素mRNA増加を伴うドパミン合成亢進作用をもち、L-dopaと併用で線条体細胞外液のドパミンの増加を増強し、臨床投与量で中等度のMAOB阻害作用を持つこと、ドパミン受容体には親和性がないことを示した。
生理学的にはZNSは被殻を主な作用点として、L-dopa の効果を増強、延長させるように作用するほか、PDにおける淡蒼球内節ニューロンの異常なバースト発射や発振活動を正常化することを発見した。後者はL-dopa不応の症状に対するZNSの効果を説明するものと考えられる。
ドパミンキノン等キノン体が神経細胞死の実行分子であること、ZNSが障害線条体でL-dopaによるキノプロテイン増加を完全に抑制することをin vivo で示し,小胞外細胞内過剰ドパミン、L-dopaの強力なメラニンへの変換作用およびグルタチオン代謝抑制作用をもつことがZNSのL-dopa誘発キノン体毒性に対する保護・抑制効果の主体であることを発見した。これはZNS併用によりL-dopa毒性を危惧することなく、L-dopaを使えることを示唆する重要な発見である。またZNSはMAOB阻害作用とは関係なくMPP+に対する保護効果を持ち、PTENの活性化を介していることを明らかにした。
結論
ZNSの高い抗PD作用とその効果を維持できること、ドパミン合成亢進を中心として、非ドパミン系も含む作用機序、既知の薬剤とは異なる機序による高い神経保護作用を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2006-04-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500885C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国で開発し、新たに臨床的に抗パーキンソン作用を発見したゾニサミド(ZNS)の作用機序はドパミン合成亢進を主体とし、L-dopaの効果を増強・延長することと共に、淡蒼球神経活動の正常化作用も持つことを明らかにした。また、ZNSがin vivo, in vitroにてドパミン、MPP+毒性に対する神経保護作用を示すこと、小胞外細胞内過剰ドパミンを安定なメラニンへの強力な変換作用、グルタチオン代謝抑制作用をもち、これによりL-dopa誘発キノン体毒性に対する強い保護作用を示すことを明らかにした。
臨床的観点からの成果
主任研究者が発見したZNSの抗パーキンソン作用について評価し、UPDRS III及びwearing-offに対する効果を明らかにした。また、これらの効果が長期的に持続し、1年後によりよい傾向にあることを示した。L-dopa誘発キノン体毒性に対する強い保護作用を明らかにしたことで、L-dopa毒性を恐れずに初期から少量のL-dopa+ZNSにて経済的かつ安全に高い効果を得られる可能性を示した。
ガイドライン等の開発
ZNSが進行期のパーキンソン病患者のwearing-off, 効果減弱状態を改善するエビデンスを示したことから、今後、ガイドラインをかきかえることができると考えている。また、初期からの少量のL-dopa+ZNSの効果、安全性、経済的優位性を今後示していく必要がある。
その他行政的観点からの成果
ねたきり状態が歩行可能となるほどの著効例もめずらしくはなく、これらについては、明らかな医療行政上も高い効果を得たといえる。
その他のインパクト
2005年5月2日日本経済新聞 現在開発中の期待できるパーキンソン病治療薬として、ゾニサミドの研究状況が取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
104件
その他論文(英文等)
141件
学会発表(国内学会)
234件
学会発表(国際学会等)
60件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
30件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyazaki I, Asanuma M, Diaz-Corrales FJ, et al.
Dopamine agonist pergolide prevents levodopa-induced quioprotein formation in parkinsonian striatum and shows quenching effects on dopamine-semiquinone generated in vitro.
Clin Pharmacol. , 28 (4) , 155-160  (2005)
原著論文2
Asanuma M Miyazaki I, Ogawa N.
Neuroprotective effects of noneteroidal anti-inflammatory drugs on neurodegenerative diseases
Curr Pharmaceu Desig , 10 , 695-700  (2004)
原著論文3
Morita S, Miwa H, Kondo T.
Effect of sonisamide on essential tremor: a pilot crossover study in comparison with arotinolol.
Parkinson Relat Disord , 11 , 101-103  (2005)
原著論文4
Hatano Y, Sato K, Elibol B, et al.
PARK6-linked autosomal recessive early-onset parkinsonism in Asian populations.
Neurology , 63 , 1482-1485  (2004)
原著論文5
Higashi Y, Asanuma M, Miyazaki I, et al.
Parkin attenuates manganese-induced dopaminergic cell death.
J Neurochem , 89 , 1490-1497  (2004)
原著論文6
Diaz-Corrales FJ, Asanuma M,MIyazaki I, et al.
Rotenone induces disassembly of the Golgi apparatus in the rat dopaminergic neuroblastoma B65 cell line.
Neurosci Lett , 354 , 59-63  (2004)
原著論文7
Toda T, Momose Y, MUrata M, et al.
Toward identification of susceptibility genes for sporadic Parkinson's disease
J Neurol , 250 , 40-43  (2003)

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-