骨髄幹細胞移植による難治性血管炎への血管再生医療に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
200500883A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄幹細胞移植による難治性血管炎への血管再生医療に関する多施設共同研究
課題番号
H16-難治-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(信州大学大学院医学研究科臓器発生制御医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 弘明(京都府立医科大学大学院医学研究科循環器病態制御学)
  • 室原 豊明(名古屋大学大学院医学研究科病態内科学 器官制御内科学)
  • 簑田 清次(自治医科大学 内科学(アレルギー膠原病学部門))
  • 天野 純(信州大学 医学部 外科学(2))
  • 高橋 将文(信州大学大学院医学研究科臓器発生制御医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、多施設臨床試験により難治性血管炎患者に対する自己骨髄細胞移植による血管再生療法の有効性と安全性の検証、およびその作用機序の解明とより侵襲の少ない新たな治療法の開発である.
研究方法
(1)多施設臨床試験
 新潟大学、横浜市立大学、日本医科大学が平成18年度より本研究班に参加することとなり、参加施設における血管再生療法の実施症例計89例、さらに、本邦14施設での多施設臨床試験(TACT-1)における閉塞性動脈硬化症(ASO)とバージャー病の本治療法の実施症例計125例について解析を行った.
(2)基礎的研究
 マウス下肢虚血および血管傷害モデルを作製して、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)による治療効果を検討した.
結果と考察
(1)多施設臨床試験
 本治療法を実施した89例のうちバージャー病が29例、膠原病が15例(PSS:10、MCTD:2、CREST:2、好酸球増多症:1)であり、その有効性と安全性を認めている.また、現在、膠原病患者(PSSとMCTD)3例に自己末梢血単核球の繰り返し移植による血管再生療法が進行中である.TACT-1では、移植療法1年および2年後まで観察できた症例は、それぞれ20例および14例であり、これら症例における疼痛スケール、上下肢血圧比、潰瘍サイズ、歩行距離などの指標は、移植後に有意に改善していたが、その改善度は時間経過と共に低下する傾向にあった.この低下の程度は、ASOがバージャー病よりも有意に大きく、ASO症例よりもバージャー病症例で治療効果が持続する傾向にあった.
(2)基礎的研究
 マウス傷害血管モデルでは、G-CSFの傷害前からの投与が傷害血管の再内皮化と新生内膜形成の抑制に有効であった.また、臨床的にG-CSF投与による血栓などの有害事象が報告されていることから、低用量G-CSFによる虚血部位局所への直接作用についても検討し、低用量G-CSFによって虚血部位での血管新生が誘導され、血流が改善することが示された.
結論
 バージャー病や膠原病による難治性血管炎による指趾の血行障害における自己骨髄幹細胞移植による血管再生療法の有効性と安全性が示されたが、特に、膠原病における本治療の効果については症例数が少なく、引き続き症例の集積と検討が必要である.また、G-CSF投与による侵襲の少ない新たな血管再生療法の可能性が示された.

公開日・更新日

公開日
2006-05-11
更新日
-