難治性重症型表皮水疱症の画期的治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500881A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性重症型表皮水疱症の画期的治療法の開発に関する研究
課題番号
H16-難治-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
清水 宏(北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 澤村 大輔(北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野)
  • 古市 泰宏((株)ジーンケア研究所)
  • 阿部 理一郎(北海道大学北海道大学病院皮膚科)
  • 秋山 真志(北海道大学北海道大学病院皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1)早期に臨床応用可能な、合成VII型コラーゲン(VIIコ)蛋白を補充する治療法を実現し、2)さらに骨髄移植を行い、移植された骨髄幹細胞より分化した皮膚細胞からVIIコを供給させるという再生治療も検討し、難治性皮膚疾患である表皮水疱症の画期的治療法を確立することである。
研究方法
1)遺伝子工学を用いて、293細胞から精製されたVIIコを濃度に溶解し、マウスの皮内に局注し、局所と全身性の反応性を検討した。次に、ヌードラットの背部皮膚にVIIコのノックアウトマウスの皮膚を移植し、 VIIコをヘアレスラットおよび植皮されたVIIコKOマウスの皮内に局所注射した。2)皮膚再生の現象の場である、創傷治癒過程の皮膚における細胞遊走因子のスクリーニングを行い、候補となる遊走因子を数種同定した。同定したそれぞれの遊走因子において、骨髄幹細胞への遊走惹起能をin vitroで検討した。さらに皮膚創傷部位への骨髄由来表皮細胞遊走への、それぞれの遊走因子の影響を検討した。
結果と考察
1)大量のVIIコを投与しても、マウスには全身の副作用は認められず、局所の異常反応もなかった。次に、 VIIコの栄養障害型患者への治療法としての有効性を検討するため、正常のラットの皮膚に局注した。その結果、 VIIコをラットの皮膚に局注すると基底膜に沈着することを確認した。 さらに、我々は栄養障害型のモデルであるVIIコ遺伝子のKOマウスの皮膚をヌードラットに植皮後、その皮膚にヒトVIIコ蛋白を局注した。その結果、基底膜部にVIIコ蛋白が組み込まれた。この結果、VIIコ蛋白補充療法は栄養障害型表皮水疱症患者における治療選択肢の1つになると考えられる。2)骨髄幹細胞から表皮細胞への分化に関する研究:本年度の研究で、骨髄由来表皮細胞の割合を増加させるために、骨髄由来表皮細胞特異的遊走因子を同定した。さらに実際に、この因子が、生体内における骨髄由来表皮細胞の割合を増加させることも明らかにした。加えて、骨髄由来表皮細胞増加の創傷治癒への影響も検討し、創処治癒を促進させることを明らかにした。今後は現在までの成果を、臨床応用に近づけるべく、表皮構造タンパク欠損マウス(VIIコKOマウス)への正常マウスから骨髄移植療法を行う。
結論
今回の研究で、VIIコの補充療法の有用性を実験動物で確認した。さらに、表皮水疱症への表皮幹細胞や骨髄幹細胞を用いる新しい再生治療の可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-05-11
更新日
-