新規腎障害分子USAG-1を標的とした腎不全回復療法の開発

文献情報

文献番号
200500875A
報告書区分
総括
研究課題名
新規腎障害分子USAG-1を標的とした腎不全回復療法の開発
課題番号
H17-難治-043
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
柳田 素子(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 北 徹(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当研究課題では、申請者が最近見出した腎臓特異的BMP拮抗分子USAG-1の生体内の役割を明らかにし、その知見を元に新しいタイプの腎疾患治療薬開発の可能性を探ることを目的とする。
現在、腎不全に陥った腎臓を回復させる治療薬はない。唯一BMP-7は動物実験レベルではその可能性が示唆されているが、注射部位の骨化や他臓器における副作用など、実用化に向けて障壁が多い。
申請者が見いだした新規BMP拮抗分子USAG-1はBMP-7に対する抑制活性が強く、その発現が腎臓に限局し、腎臓における局在もBMP-7と完全に一致する。以上のことから申請者は『USAG-1が腎におけるBMP-7の調節因子であり、腎疾患の際にはBMP-7の腎修復機能を阻害する』という仮説をたてた。
もしこの仮説が正しければ、USAG-1中和抗体には腎不全治療薬としての可能性があり、USAG-1の発現が腎臓特異的なため、副作用が少ないと予想される。
研究方法
当研究課題では前述の仮説を検証するため以下の実験を行った。
(1) USAG-1ノックアウトマウスに各種腎疾患モデルを惹起し、病変形成および修復過程を野生型と比較検討する。
(2) 臨床医学への展開をより現実的にするために、USAG-1の中和抗体を作成し、その腎疾患治療薬としての可能性を検証する。
結果と考察
USAG-1ノックアウトマウス(以後KO)を作成し、各種腎疾患を惹起したところ、KOでは野生型マウスに比べて腎疾患抵抗性であり、BMPシグナルが増強していることが明らかとなった。さらにKOに上記の腎障害モデルを惹起した上でBMP-7の中和抗体を投与するとKOの腎障害抵抗性が消失することから、増強しているBMPシグナルの少なくとも一部分はBMP-7によるものであると考えられた。以上の結果から上記の仮説が正しいことが検証され、USAG-1の中和抗体や発現抑制剤には腎疾患治療薬としての可能性があることが明らかとなった。現在中和抗体作成に向けて抗原となるリコンビナントUSAG-1の大量精製中である。
結論
上記のように申請者はUSAG-1が生体内でBMP-7の腎障害修復作用を調節していることを証明した。さらに申請者はUSAG-1が腎臓に発現するBMP拮抗分子の中で最も発現が多く、その局在がBMP-7と一致していることを証明しており、USAG-1がBMP-7の腎修復機構を調節する中心的因子であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
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