難治性膵疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
200500865A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性膵疾患に関する調査研究
課題番号
H17-難治-028
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大槻 眞(産業医科大学医学部消化器・代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 和憲(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター)
  • 峯 徹哉(東海大学医学部消化器内科学)
  • 下瀬川 徹(東北大学大学院消化器病態学)
  • 片岡 慶正(京都府立医科大学大学院消化器病態制御学)
  • 竹山 宜典(近畿大学医学部外科)
  • 広田 昌彦(熊本大学医学薬学研究部消化器外科)
  • 西森 功(高知大学医学部消化器病態学)
  • 岡崎 和一(関西医科大学内科学第三)
  • 丸山 勝也(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター)
  • 成瀬 達(名古屋大学大学院消化器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症急性膵炎では、1)重症急性膵炎患者の実態把握と疫学的解析、2)急性膵炎の診断と重症度判定基準の改定と検証、3)急性膵炎初期診療指針の作成、慢性膵炎では、1)慢性膵炎の病態、疫学・転帰調査結果の解析、2)自己免疫性膵炎の診断基準の改定と治療指針の検証、3)早期慢性膵炎の診断基準の確立、4)慢性膵炎診断基準の改定、5)慢性膵炎診療ガイドラインの作成を目指す。膵嚢胞線維症(CF)では、1)CF患者の疫学的解析と、2)本邦におけるCFの原因遺伝子(CFTR)変異を解明する。
研究方法
2004年に実施した急性膵炎全国調査の個人調査票を基に、急性膵炎重症度判定基準の改定試案の検証と治療内容の実態を解析した。全国47都道府県に対して特定疾患治療研究事業の調査をした。
2003年に実施した慢性膵炎全国調査の個人調査票を基に、合併症と治療の実態を解析した。日本膵臓学会との合同で、自己免疫性膵炎診断基準の改定を行った。研究班参加施設の症例を対象に自己免疫性膵炎治療指針の検証を行った。2004年1年間および過去10年間の受療患者を対象にCF疫学調査を行った。
倫理面への配慮:全ての研究は主任研究者と担当研究者の所属する機関の倫理委員会の承認後に実施した。

結果と考察
重症度判定基準改定最終案では、予後判定因子とCT Gradeを独立させ、急性膵炎は「軽症」と「重症」に分類した。急性膵炎最重症例で発症24時間の輸液量が3.0 L未満例では致命率が100%であった。軽症・中等症急性膵炎にも動注療法が施行されていた。平成16年度の重症急性膵炎新規医療受給者数は年間推定受療患者数の33%に過ぎなかった。更新受給者数は前年度より増加していた。アルコール性急性膵炎は高頻度で慢性膵炎へ進展した。大酒家で急性膵炎を繰り返す症例は慢性膵炎早期として治療すべきである。自己免疫性膵炎診断基準改定案では、画像による膵病変範囲の制限を除き、IgG4の因子を加えた。自己免疫性膵炎の治療の基本はステロイド投与であった。2004年中のCF患者は13名、過去10年間の患者数は38名程度と考えられた。
結論
急性膵炎診断基準と重症度判定基準改定最終案を作成した。治療では、初期輸液が重要であり、動注療法に関しては適応や開始時期・期間を再評価する必要があった。重症急性膵炎に対する医療受給者証更新条件を再検討する必要がある。アルコール性急性膵炎では慢性膵炎への進展が多く認められた。自己免疫性膵炎診断基準改定試案を作成した。CF患者は本邦では極めて稀であることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2006-05-11
更新日
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