栄養表示基準設定のための基礎的調査研究

文献情報

文献番号
199700083A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養表示基準設定のための基礎的調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
細谷 憲政(茨城県健康科学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 金谷建一郎(財団法人日本食品分析センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
栄養改善法が平成7年5月24日付で改正され、「食」を通じた国民の健康づくりを推進するために、その基盤となる栄養表示の適正化を意図した「栄養表示基準」が平成8年5月24日付で施行されるところとなった。これを受け、本研究では昨年度までに加工食品中の栄養成分の分析法を整備し、栄養表示に必要な主要な栄養成分の分析法指針を策定したところである。この成果は、「栄養表示基準の導入に伴う栄養成分等の分析方法等について」(平成8年5月23日衛新第47号)に結実した。今年度は、これまでに策定した分析法の実用性を対象食品の範囲を広げて再検討し、より広範な食品に適用できるように見直すことを目的とした。
研究方法
分担研究者の所属する財団法人日本食品分析センターの協力を得て、これまでに策定した分析法について、適用に支障のある加工食品の種類、適用に支障のある栄養成分、適用可能とするための対応策などについて聞き取り調査を行った。
また、わが国独自の分析法である低分子水溶性食物繊維の高速液体クロマトグラフ法につき、市販加工食品13品目を用いてその精度を調査し、問題点を改めることによって当該法のバリデーションを図った。
結果と考察
今回の再検討により分析法を見直した栄養成分とその主要内容を以下に個条書きでまとめた。 たんぱく質 :?ゼラチンの窒素・たんぱく質換算係数として 5.55 を採用。? 核酸を多く含む食品のたんぱく質の定量にケルダール法を適用するのは妥当でない旨を[注]記。? ケルダール法では,レシチンの窒素が脂質とたんぱく質に重複して測り込まれるので,レシチンを多く含む食品にケルダール法を適用するのは妥当でない旨を[注]記。 脂質 :?酸分解法の適用対象に「野菜類」及び「藻類」を追加。 糖質 : 抹茶やココアなどでは,タンニン,カフェイン及びテオブロミンを (炭水化物) 別途測定し,炭水化物(糖質)から差し引くこともある旨を[注]記。 食物繊維  :?酵素・重量表法において残さ中の脂質分がアセトン洗浄では除去きれない場合,アセトン洗浄の後にジエチルエーテル洗浄を追加するのが良い旨を[注]記。? 今回の研究成果を基に,高速液体クロマトグラフ法(酵素・HPLC法)の改良法を策定。
ビタミンA :? α-カロテン及びクリプトキサンチンの高速液体クロマトグラフ法を追記。? α-カロテン,β-カロテン及びクリプトキサンチンの生物効力(A効力)の相対比を 1:2:1 とし,その旨を[注]記。 ビタミンC : 策定した方法では,ステアリン酸やパルミチン酸などの脂溶性のエステル類を検出できない旨を[注]記。 ビタミンD : 試験溶液の調製操作を2倍にスケールアップすれば,定量下限を半分に下げることは可能である旨を[注]記。  熱量 :?飽和脂肪酸に由来する熱量の算定法を追記。? アルコール(エタノール)の定量法の1つとして酵素法を[注]に追加。
結論
今回の見直し作業によって、これまでに策定した分析法がより広範な食品に適用できるようになったと考える。ただし、存在する全ての食品に適用可能な単一の分析法を策定することは困難である。本研究で策定した方法以外にも日本農林規格や日本食品標準成分表等で食品ごとに適切な分析法が設定されている場合も多い。また,今回の研究によって,栄養補助食品,健康食品あるいは調味料・香辛料類など特殊な成分を多く含む食品には本研究で策定した分析法の適用が妥当でないものも多く,これらの食品に対する分析法を別途に策定する必要性も示された。栄養表示のための分析に当たっては、「栄養表示基準の導入に伴う栄養成分等の分析方法等について」(平成8年5月23日衛新第47号)に収載されている方法の採用を原則としつつも,それぞれの食品に適した科学的に妥当な方法を選択できる余地を残すことも重要である。そこで、その旨を「栄養表示基準等の取扱いについて」(平成8年5月23日衛新第26号)に盛り込むことを提言する。ただし、何を以て分析法が科学的に妥当であると判断するかについてわが国では十分な議論がなされているとは言えない。わが国でも分析法策定のための共同実験の実施、あるいは分析機関の機器や試薬等、適正な業務管理の充実、更には分析技能を評価するための標準試料の供給制度等の確立が必要である。また、現在分析には一部、有害試薬が使用されているが、試験者及び環境への影響を配慮するため、これらの試薬を使用しない代替法の開発が必要であり、本研究で策定した分析法も定期的な見直しが必要である。

公開日・更新日

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更新日
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