難治性疾患による涙腺の障害に対する新規治療法の開発

文献情報

文献番号
200500840A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疾患による涙腺の障害に対する新規治療法の開発
課題番号
H17-難治-045
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
坪田 一男(慶応義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性疾患であるスティーブン・ジョンソン症候群やシェーグレン症候群などにより消失または著しく障害された涙腺・唾液腺の分泌機能を回復するために再生医療を応用することが本研究の目的である。すなわち涙腺・唾液腺組織から幹細胞を同定純化し、採取された幹細胞を分泌障害を有する当該腺組織に移入することにより障害された分泌機能の回復をはかる。
研究方法
1.マウス顎下腺より採取したRNAを鋳型としてRT-PCRによりクラステリン全長cDNAを増幅した。2. 得られたクラステリン全長cDNAをmammalian expression vectorであるpCAGS-puroに挿入し大腸菌で大量培養した後plasmidを精製した。導入遺伝子を挿入していないempty vectorも作製した。3.精製したpCAGS-puroをリポフェクタミン2000によりマウスの胎児線維芽細胞株(STO)に遺伝子導入し、puromycinによる薬剤選択2週間後、安定細胞株を採取した。4. SP細胞特異的因子として同定されたクラステリンが酸化ストレスを抑制する可能性が考えられたのでin vitroでその可能性を検証した。
 
結果と考察
移入した組織におけるSP細胞の生着を詳細に検討した結果、組織構築能は認められず、散在性に存在しているのみであった。故に、涙液・唾液量の回復はSP細胞から分泌される液性因子を介した残存組織の賦活化による可能性が強く示唆された。次に、cDNA microarrayを用いた解析によりSP細胞特異的に発現する複数の遺伝子を同定し、その中のクラステリン遺伝子を恒常的に発現するSTO細胞を樹立し機能解析に用い、またH2O2刺激後に生細胞数を計測するとともに細胞内で産生されるROS量を解析した。結果、STO細胞ではH2O2刺激による細胞死が抑制され細胞内のROS量も減少していた。ゆえに、SP細胞はクラステリンなどの液性因子を分泌することにより残存腺組織の機能を賦活化する可能性が示唆された。更に当該腺組織におけるslow cycling cellにおけるクラステリンの発現を検討した結果、その一部がクラステリン陽細胞であることが確認された。
結論
放射線照射により涙液・唾液の分泌障害を呈するマウスを作製し、これらの涙腺・唾液腺組織にSP細胞を移入した結果、涙液・唾液分泌量に改善が認められた。このことより、SP細胞を用いた細胞治療が涙液・唾液分泌障害に対する新規治療法として応用可能であることが示唆された。加えて、細胞移入の治療効果として移入した細胞からの細胞保護因子の分泌を介した機構が存在する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-06-12
更新日
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