筋萎縮性側索硬化症の画期的診断・治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200500839A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の画期的診断・治療法に関する研究
課題番号
H17-難治-044
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科 神経内科学  )
  • 田中 啓二(東京都医学研究機構東京都臨床医学総合研究所 生化学・分子遺伝学  )
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学医学部 生理学・神経科学・再生医学)
  • 郭 伸(東京大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 高橋 良輔(京都大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 中野 今治(自治医科大学 神経内科学)
  • 船越 洋(大阪大学大学院医学系研究科 分子神経学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を克服するため、基礎・臨床を問わずALS関連の第一線で活躍している我が国の研究者を結集して集約的研究を推進していく体制を構築することにより、本症の病態機序に基づくトランスレーショナル治療開発研究を推進する。本研究目標は新規治療の開発、治療手段の開発、病態に関連する新規標的分子の探索同定であり、三者を有機的に結合させることによって成果の生産性を向上させ、本研究の早期目的達成を図る。
研究方法
本研究では、1)神経栄養因子、プロテオソーム酵素、RNA干渉などを駆使したALS新規治療法の開発 、2)治療手段の開発として薬剤体内デリバリーシステム開発および投与法の改良、3)GluR2RNA編集に関わるADAR2など孤発性ALSの病態に関連する新規標的分子等の探索、以上3本の研究ラインを円滑に稼働させる。これらの研究成果の中で有用な候補治療薬/治療法について、臨床応用に向けた具体的方向性を打ち出すとともに、トランスレーショナルリサーチへの本格的展開を目指す。
結果と考察
今年度の研究成果としては、Dorfin-CHIP融合分子、古細菌プロテアソームをはじめとするより強力な治療薬候補の開発、ファゴゾームシステム、siRNA療法、ウイルスベクター開発、再生誘導因子の利用などが進捗した。そしてこれらは総じて具体的なヒトへの臨床応用に向けた治療法の開発に繋がる高いポテンシャルを持っている。一方孤発性筋萎縮性側索硬化症における運動ニューロン特異的な遺伝子発現の網羅的解析展開、GluR2受容体編集の変異の解明、神経細胞変性に係わる候補分子の解析に関しての研究が進捗した。これらの成果は病態診断マーカーや新規治療に繋がる大きな可能性を秘めている。
結論
本研究が標的とする筋萎縮性側索硬化症の病態に基づく治療法の確立は今世紀の最も重要な課題の1つであり、本疾患に対する有効な治療法の開発は、我々神経疾患の研究に携わる者にとっての使命である。今後本研究成果の中から臨床試験への展望が開けるものについて積極的なトランスレーショナルリサーチへの展開を推進していきたい。本研究班が目指すALSという難治性に対しての臨床応用に向けた分子標的治療の開発は、患者や家族にとっても大きな希望をもたらすものであり、さらに運動ニューロンの過酷な変性死へのチャレンジは他の神経変性疾患研究への重要なインパクトを与えるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
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