門脈血行異常症に関する調査研究

文献情報

文献番号
200500835A
報告書区分
総括
研究課題名
門脈血行異常症に関する調査研究
課題番号
H17-難治-026
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
橋爪 誠(九州大学大学院医学研究院災害・救急医学)
研究分担者(所属機関)
  • 兼松 隆之(長崎大学大学院医歯薬総合研究科移植・消化器外科)
  • 川崎 誠治(順天堂大学医学部肝胆膵外科)
  • 北野 正剛(大分大学医学部腫瘍病態制御講座第1外科)
  • 森安 史典(東京医科大学内科学第四講座)
  • 前原 喜彦(九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科学)
  • 井廻 道夫(昭和大学医学部消化器内科学)
  • 塩見  進(大阪市立大学大学院医学研究科核医学)
  • 小嶋 哲人(名古屋大学医学部保健学科検査技術科学専攻病因・病態検査学講座 )
  • 國吉 幸男(琉球大学医学部生体制御医科学講座機能制御外科学分野)
  • 末松  誠(慶應義塾大学医学部医化学教室)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 中沼 安二(金沢大学大学院医学系研究科形態機能病理学)
  • 鹿毛 政義(久留米大学医学部病理学教室)
  • 松谷 正一(千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の研究目的は、原因不明で門脈血行動態の異常を来す特発性門脈圧亢進症(IPH)、肝外門脈閉塞症(EHO)、バッドキアリ症候群(BCS)を対象疾患とし、これら疾患の病因・病態を解明し、より根本的な治療を目指して、予後の向上を達成することにある。
研究方法
IPH、EHO、BCSの3疾患の病因・病態を分子生物学的観点、病理学的観点、疫学的観点
および臨床的観点から検討した。
結果と考察
分子生物学的検討では、IPHの動物モデル作成を検討するため、connective tissue growth factor(CTGF)遺伝子の肝臓へ及ぼす影響を検討した。CTGFは投与3日目に肝に発現していたが7日目、14日目には認められず、肝での発現は一過性であり、肝組織の変化は軽度であった。また、門脈血栓症を発症して凝血学的検査の結果プロテインS欠損症が強く疑われた症例に対し、PSα遺伝子解析を含めてその病因・病態の解明を試みた。解析の結果、プロテインSα遺伝子のプロモーター領域である転写開始点の21bp上流にC→Tの点突然変異を同定した。BCSを医用画像解析と数値流体力学の手法を用いて流体力学的に流れ場を解析したところ、BCSの血管合流部下流側で複雑流れ場が形成されていることが観察され、血管壁面せん断応力の上昇がみられた。
病理学的検討では、わが国におけるIPH症例の肝移植の実態を検討した。肝移植を行っている4施設を抽出し、これらの施設での肝移植症例の調査を行った結果、肝移植例の中に2例のIPHが含まれていた。病理学的には、両例とも肝の萎縮が目立った。IPHの組織所見(門脈域の硬化、弾力線維の沈着、門脈枝の狭小化、異常血行路等)に加え、部位により線維性隔壁形成や再生結節の形成をみる部位があり、むしろincomplete septal cirrhosisに近い病態であった。
疫学的検討では、門脈血行異常症の全国疫学調査を実施した。一次調査の結果、2004年1年間の受療患者数(95%信頼区間)は、IPH:850人(640-1,070)、EHO:450人(340-560)、BCS:270人(190-360)と推定された。男女比は、IPH 1:2.3、EHO 1:0.7、BCS 1:1.3であった。
結論
対象3疾患の検討を多方面から行うことで、病因・病態の解明及び予後の向上に大きく貢献することができた。

公開日・更新日

公開日
2006-05-11
更新日
-