文献情報
文献番号
200500833A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫性神経疾患に関する調査研究
課題番号
H17-難治-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
研究分担者(所属機関)
- 糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科神経内科学)
- 納 光弘(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経病学)
- 池田 修一(信州大学医学部内科(神経内科・リウマチ・膠原病内科))
- 出雲 周二(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科附属難治ウイルス病態制御研究センター)
- 太田 宏平(東京理科大学理学部教養)
- 大原 義朗(金沢医科大学微生物学)
- 荻野 美恵子(北里大学医学部神経内科学)
- 梶 龍兒(徳島大学医学部附属病院神経内科)
- 神田 隆(山口大学医学部脳神経病態学講座神経内科学)
- 菊地 誠志(北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座神経内科学)
- 楠 進(近畿大学医学部神経内科)
- 桑原 聡(千葉大学大学院医学研究院神経内科学)
- 高 昌星(信州大学医学部保健学科生体情報検査学)
- 郡山 達男(広島大学大学院脳神経内科学)
- 清水 潤(東京大学医学部附属病院神経内科)
- 錫村 明生(名古屋大学環境医学研究所神経免疫)
- 祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学)
- 田中 惠子(新潟大学脳研究所神経内科学)
- 田中 正美(国立病院機構宇多野病院)
- 千葉 進(札幌医科大学神経内科)
- 中村 龍文(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染分子病態学)
- 野村 恭一(埼玉医科大学総合医療センター神経内科)
- 原 寿郎(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野小児科学)
- 原 英夫(国立長寿医療センター研究所血管性認知症研究部)
- 久永 欣哉(国立病院機構宮城病院臨床研究部)
- 藤井 義敬(名古屋市立大学大学院医学研究科腫瘍・免疫外科学)
- 古川 漸(山口大学医学部生殖・発達・感染医科学)
- 松井 真(金沢医科大学神経内科)
- 松尾 秀徳(国立病院機構長崎神経医療センター神経内科)
- 水澤 英洋(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学)
- 村井 弘之(九州大学病院神経内科)
- 山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
- 結城 伸泰(獨協医科大学神経内科)
- 吉川 弘明(金沢大学保健管理センター)
- 米田 誠(福井大学医学部病態制御医学講座内科学(2))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
47,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症(MG)、ギラン・バレー症候群(GBS)、フィッシャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、ルイス・サムナー症候群、フロウ・フカセ症候群の7指定対象疾患と、関連疾患について、疫学像・臨床像を明らかにすること、発症機序を解明すること、新しい治療法を開発すること、および発症予防法を発見することを目的とする。
研究方法
MS全国臨床疫学調査により集積されたデータに基づき日本人MSの臨床像の解析を行った。また視神経脊髄型MS(OSMS)における自己抗体の検索を行った。MSにおける制御性T細胞の解析や、DNAマイクロアレイを用いた末梢血リンパ球におけるIFNβ反応性遺伝子解析を行った。EAEの各種薬剤の治療効果を調べた。抗MuSK抗体陽性MGの臨床像の解析、CIDP全国調査を行った。各種の動物モデルの作製を試みた。
結果と考察
OSMSでは通常型MSに比べMcDonald診断基準を満たす症例の割合が少なく、長大な脊髄病変を有する割合が高く、膠原病合併例ではIFNβの効果が劣っていた。OSMSではNMO-IgGが63%で陽性で、陽性例はより重症で長大な脊髄病変を有していた。この自己抗体はAquaporin-4を認識した。MSではCD4+CD25+highFoxp3+制御性T細胞が減少しており、IFNβ投与後に増加した。DNA マイクロアレイにより、IFNβが多彩な遺伝子を誘導することを見出した。EAEに対するトロンビン阻害薬やarundic acidの効果が明らかとなった。抗MuSK抗体陽性MGの臨床像と治療の方向性が示された。また抗MuSK抗体陽性MGラット作製に成功した。CIDP全国疫学調査の結果、有病率は1.9/10万人であった。C. jejuni菌体抗原感作によるGBSモデルの作製に成功した。血液神経関門(BNB)を構成する血管内皮細胞の初代培養を行いBNB in vitro モデルを確立した。難治性MG/CIDPなど治療抵抗性の免疫性神経疾患に対するシクロスポリンの有効性が示された。
結論
欧米と異なる日本人MSの臨床像が明らかになった。MSでは制御性T細胞やDNAマイクロアレイの解析等により病態解明が一層進むことが期待される。BNB in vitroモデルにより自己免疫性末梢神経疾患の治療法開発が期待できる。EAEに対する治療効果が報告されたほか、抗MuSK抗体陽性MGラットやGBSモデルが相次いで作製され、病態解明に役立つと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2006-05-11
更新日
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