血液凝固異常症に関する調査研究

文献情報

文献番号
200500829A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固異常症に関する調査研究
課題番号
H17-難治-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤村欣吾(広島国際大学)
  • 倉田義之(大阪大学医学部附属病院)
  • 桑名正隆(慶應義塾大学医学部)
  • 宮田敏行(国立循環器病センター)
  • 村田満(慶應義塾大学医学部)
  • 小嶋哲人(名古屋大学医学部)
  • 川﨑富夫(大阪大学医学部)
  • 坂田洋一(自治医科大学)
  • 藤村吉博(奈良県立医科大学)
  • 和田英夫(三重大学医学部)
  • 小林隆夫(信州大学医学部)
  • 中野赳(三重大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定疾患治療研究対象事業である特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の他に血栓性微少血管障害症,特発性血栓症,深部静脈血栓症/肺塞栓(DVT/PE,いわゆるエコノミークラス症候群)を対象とし,これら疾患の分子病態解析に基づいた診断基準,治療指針ガイドラインの策定及び疫学研究成果により我が国の医療・福祉に役立てる事を目的とする.
研究方法
昨年度までに作成した診断基準や治療指針の妥当性を検討するとともに,対象疾患の発症頻度,診療状況を把握するために臨床個人調査票(特定疾患調査表)または医療機関へのアンケートによる全国実態調査を行った。
結果と考察
ITPに関する疫学調査では,難治例が4.6%と従来予測に比べて少ない事が明らかとなった。さらに,特定疾患調査表に基づく疫学調査を30年ぶりに行い,有病数は10万人当たり12.89人と微増していたが,発症数は10万人当たり1.25人/年と半減していた。年齢分布では50歳以降の中高年に最も大きなピークが存在し,患者年齢の高齢化が確認された。また,血栓性血小板減少性紫斑病の診断に有用な,簡便・迅速かつ高感度なADAMTS13活性測定法の開発に成功し,臨床検査としての普及をめざしている。特発性血栓症の候補遺伝子解析では,プロテインSのK196E変異が静脈血栓症と関連することを明らかにした。最近わが国で増加しているDVT/PEの現況を明らかにするための実態調査を行い,1)新潟中越地震後PEの危険因子は女性と車中泊であったこと,2)被災住民を対象とした下肢エコー検査で車中泊避難者の約30%に下腿静脈血栓を認めたこと,3)PE/DVT予防ガイドライン発表と肺血栓塞栓症予防管理料が新設された平成16年以降に院内PE発症数は微減したが,依然として周術期PE発症数は多いこと,4)精神科病棟入院患者のPE発症率は0.043%と周術期と同等なことを明らかにした。これらの知見から,様々な状況下でDVT/PEの予防対策を早急に講じることの必要性が示された。
結論
全国規模の疫学調査を展開し,ITP患者の高齢化,ITP難治例の減少など医療行政の参考となる重要な知見をすでに得ている。今後,我が国における疫学像をさらに明確にするとともに,それら成果を診療,福祉などの分野に活用していく作業が必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-07-06
更新日
-