上位運動神経優位ALSの分子病態解明と治療薬の開発

文献情報

文献番号
200501372A
報告書区分
総括
研究課題名
上位運動神経優位ALSの分子病態解明と治療薬の開発
課題番号
H17-こころ-018
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
池田 穰衛(東海大学総合医学研究所 分子神経科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 岩倉 洋一郎(東京大学医科学研究所 ヒト疾患モデル研究センター )
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)は、選択的な上位・下位運動神経変性を病因とする難治性神経疾患である。本研究では、一群の上位運動神経疾患の原因遺伝子であるALS2遺伝子に注目し、個体レベルでのALS2分子機能解析を軸に、ALSにおける選択的な運動神経変性の分子機序の解明と治療薬開発、ALS治療法・治療薬開発の具体化につながる知見と素材を得ることを目的としている。
研究方法
平成17年度は、1)ALS2タンパク質の神経細胞内挙動の解析。2)Als2遺伝子欠損マウスの神経病理学的解析。3)家族性ALS:SOD1遺伝子変異陽性および陰性例の臨床病理解析。4)ALSモデルマウスの作出。5)ALSモデルマウスの神経病理解析および神経細胞死における封入体の意義の検討、の5項目の研究を遂行した。
結果と考察
本年度は、以下のような成果が得られた。(1)Als2欠損マウスに由来した初代培養細胞系を用いた解析により、ALS2タンパク質機能喪失がエンドゾーム融合の遅延をもたらすことが明らかとなった。(2)Als2遺伝子欠損マウス(ALS2モデルマウス)の神経病理学的解析を行い、Als2遺伝子欠失が小脳プルキンエ細胞ならびに運動神経軸索の加齢依存的減少をもたらすことが判明した。(3)家族性ALS症例について、SOD1遺伝子変異陽性例と陰性例に分け、それぞれの臨床病理像を解析した。(4)巨大な遺伝子を操作を可能にするCre-loxPシステムを利用した発生工学技術を確立した。(5)L84VおよびH46R変異SOD1遺伝子トランスジェニック(Tg)マウスを解析した結果、H48R変異Tgマウスが安定した表現型を示し、新規治療法開発のためのモデル系として適していることが明らかとなった。
結論
近年、多くの神経変性疾患発症の分子機構として細胞内物質輸送系あるいはシグナル伝達系の異常が想定されていることから、ALS2遺伝子変異による運動神経細胞機能障害・細胞死も類似の分子メカニズムにより引き起こされている可能性が高い。今後の研究により、ALS2タンパク質の分子的および個体レベルでの機能が明らかにされ、ALSおよびその関連運動神経疾患の臨床症候の分子的理解、分子診断法、治療法・治療薬開発への道が開かれるものと考えている。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-