犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究

文献情報

文献番号
200500826A
報告書区分
総括
研究課題名
犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究
課題番号
H17-こころ-014
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小西 聖子(武蔵野大学 人間関係学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 聡美(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 大山 みち子(武蔵野大学 人間関係学部)
  • 堀越 勝(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 辰野 文理(国士舘大学法学部)
  • 山下 俊幸(京都市こころの健康増進センター)
  • 高岡 道雄(兵庫県尼崎市保健所)
  • 有園 博子(兵庫県こころのケアセンター)
  • 柑本 美和(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、1.犯罪被害者支援と連携の現状、犯罪被害者の精神医学的状況及び治療の現状を把握し、2.心理的外傷治療の実証的知見を得て、3.精神保健福祉センターや保健所、一般精神医療機関向けの実践的な治療モデルを作成し、4.犯罪被害者と医療と法の接点に関する知見を得ることを目的としている。
研究方法
1.精神保健福祉センター調査、及び医療者調査を実施。犯罪被害者遺族の精神保健の現状を把握。犯罪被害者と関わる弁護士を対象に調査を実施した。2.最も有効とされるPTSDの認知行動療法を米国から導入し、治療を実践した。3.JR福知山線列車事故における過失致死事件被害者への介入について実態分析を実施した。4.犯罪被害者等給付制度の比較法的研究及び、被害者への経済的支援についての聞き取り調査を実施。
結果と考察
1.全国精神保健福祉センター調査では56機関より回答を得た。犯罪被害者及び家族の相談が電話及び面接相談に占める割合は、ともに1%前後であった。医療者調査では、回答者の多くが治療や技術、司法知識の不足を認識していた。また犯罪被害者遺族49名の調査では、死別前に精神科の受診経験のない者が93.9%で、死別後に精神科受診した者が40.8%、現在症PTSDと評価された者は20名(40.8%)、6年以上PTSD症状が持続している者は9名(現在症PTSD診断者の45.0%)であった。弁護士調査では、心理的ケアや精神科医療機関へのニーズが充足されていないことが指摘された。2.認知行動療法では、4例のうち治療を完遂した者は症状の明らかな改善を示した。また、実際に被害者支援を行っている施設の心理的支援方法の実態を分析した。文献研究からは、様々な被害者への介入・治療方法の中でも、CBTによるPTSD介入は効果的であることが示された。3.JR福知山線列車事故被害者への介入調査では、迅速なアウトリーチとこころのケア窓口の設置、関係機関の協力体制の重要性が確認された。4.犯罪被害者給付制度では、犯罪被害者が心身の回復を図るための経済的援助が不十分であることが明らかとなった。
結論
平成17年度調査では、事件後平均6年経った遺族においても現在症PTSD診断率が4割に達するが、精神科医療を受診経験のない者も多く、一方、精神保健福祉センターでの犯罪被害者の相談ケースは1%程度だと示された。犯罪被害者の回復に必要な切れ目のない支援のシステムがいかにすれば機能するのか、次年度以降さらに発展させて検討したい。

公開日・更新日

公開日
2006-09-28
更新日
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