神経移動障害を伴う筋疾患の病態解明と治療法実現に向けた技術集約的研究

文献情報

文献番号
200500820A
報告書区分
総括
研究課題名
神経移動障害を伴う筋疾患の病態解明と治療法実現に向けた技術集約的研究
課題番号
H17-こころ-027
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
萬谷 博(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Muscle-eye-brain病(MEB)とWalker-Warburg症候群(WWS)は先天性の筋ジストロフィー症に中枢神経系の形成障害を伴う疾患である。これらの疾患ではジストロフィン糖タンパク質複合体の構成分子であるα-dystroglycanの糖鎖異常が観察される。我々はこれまでに、α-dystroglycanの糖鎖解析からO-mannose型糖鎖を発見し、MEBとWWSの原因遺伝子産物POMGnT1とPOMT1及びPOMT2がこの糖鎖の生合成に関わる糖転移酵素であることを明らかにしている。本年度は、遺伝子診断に代わる簡便迅速な診断法としての酵素活性測定法の可能性の検討と、O-mannose型糖鎖のGalβ1-4GlcNAc 形成を担うgalactose転移酵素の検討を中心に研究を行った。
研究方法
ラット各臓器及びヒト由来培養細胞株のPOMGnT及びPOMT活性を測定し、診断に適した酵素原を探索した。ヒトβ1,4GalTI~VIIのFLAG-tag融合蛋白質を作製し、GlcNAcβ1-2Man-peptideに対する基質特異性を解析した。また、ヒトの各組織における各β1,4GalT mRNAの発現量を定量的に解析した。
結果と考察
我々の開発した高感度活性測定法により、今回初めてPOMGnT1とPOMT活性の組織分布が明らかになり、ラットのPOMGnT活性とPOMT活性は脳が最も高いことが分かった。MEBおよびWWS患者由来のリンパ球細胞の酵素活性を測定した結果、正常細胞では活性が検出され、患者細胞では検出されなかったことから、診断法への応用の可能が示された。GlcNAcβ1-2Man-peptideに対する各β1,4GalTのgalactose転移活性はGalT IIが最も高く、各β1,4GalT mRNA発現量はGalT IIが脳で発現が高いことが分かった。このことから、β1,4GalTIIが脳におけるO-mannose型糖鎖合成酵素として機能していることが考えられた。
結論
血球系のリンパ球で高感度に酵素活性の検出ができたことは、検体採取時の簡便性や患者の負担を考慮する上で極めて重要である。O-mannose型糖鎖のGalβ1-4GlcNAc形成を担うgalactose転移酵素はβ1,4GalTIIであることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-