遺伝子アレイによる多発性硬化症再発予測法樹立に関する研究

文献情報

文献番号
200500814A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子アレイによる多発性硬化症再発予測法樹立に関する研究
課題番号
H17-こころ-020
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 準一(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第六部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)は中枢神経系白質に炎症性脱髄巣が多発し、多彩な神経症状が再発を繰り返す難病である。MSでは活性化自己反応性CD4+ Th1細胞が血液脳関門を通過して炎症性脱髄を惹起する。再発を反復し炎症が遷延化すると軸索傷害を来して不可逆的機能障害を残す。MSは若年成人に好発し、視力障害・対麻痺が社会復帰を困難にする。近年インターフェロンベータ(IFNB)のMS再発抑制効果が立証され、再発期に副腎皮質ステロイド大量投与、寛解期にIFNB継続的投与を行う方法が、一般的治療法として選択されている。しかし現在までMS再発予測法は確立されていない。もし再発を事前に予知出来れば、早期に十分量の免疫調節薬を集学的に投与し、炎症を抑制して後遺症を軽減出来る。近年ヒト全遺伝子塩基配列が解明され、遺伝子アレイを用いて個々の細胞における数万遺伝子の発現情報を包括的に解析可能になった。この解析法により、従来の研究方法では予期しなかった遺伝子のMS病態における役割が次々解明された。本研究(予定期間2年)は遺伝子アレイを用いてMS再発予測法の樹立を目指す。
研究方法
平成17年度(初年度)は多数例の再発寛解型MS患者の再発期・寛解期に末梢血Tリンパ球を採取しRNAを精製・保存した。平成18年度(第2年度)はHuman cDNA microarrayを用いて遺伝子発現プロフィールを包括的に解析し、階層的クラスター解析(hierarchical clustering analysis; HCA)・サポートベクターマシン解析を施行して再発特異的遺伝子(relapse-specific genes; RSG)を同定する。RSGを同定出来れば定量的real-time RT-PCR法による再発予測キットを作成する。
結果と考察
72名のMSと22名の健常者(Nc)で発現差異を認める286遺伝子を指標遺伝子(discriminator genes)としてHCAを施行し、MS病型分類データベース(MS classification database; MSCD)を樹立した。MSCDは多様な病態を呈するMSを4群に分類し、各群は疾患活動性・病巣分布・IFNB治療反応性との密接な関連を認めた。現在同一患者の再発期・寛解期サンプル6セットの解析を終了し、さらに症例数を増加させてRSGを探索中である。
結論
遺伝子アレイによるMS再発予測法が樹立されれば早期治療を可能にし、患者の後遺症を減らして社会復帰を促進する手助けとなる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-20
更新日
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