双生児法による精神疾患の病態解明

文献情報

文献番号
200500810A
報告書区分
総括
研究課題名
双生児法による精神疾患の病態解明
課題番号
H17-こころ-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 忠史(独立行政法人理化学研究所 老化・精神疾患研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 大木秀一(石川県立看護大学 看護学部)
  • 大野裕(慶應義塾大学 保健管理センター)
  • 岡崎祐士(三重大学 医学部)
  • 小澤寛樹(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 病態解析制御学講座 精神病態制御学)
  • 笠井清登(東京大学 医学部附属病院 精神神経科)
  • 齋藤治(国立精神・神経センター 武蔵病院)
  • 陣野吉広(琉球大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神疾患の一卵性双生児における一致率は二卵性より高いが100%ではない。その理由として、環境因やゲノム差異が考えられる。我々は、疾患に関して不一致な一卵性双生児に着目して直接疾患の原因を同定する、新しい双生児研究を提案している。
本研究では、双生児データーベースを構築すると共に、不一致双生児を対象としたゲノム差異、脳形態差異を明らかにすることを目的とした。
研究方法
本研究では、1)一卵性双生児のデーターベースを構築し、こうした研究の対象となる被験者が発見できるシステム構築を開始し、2)不一致双生児を対象として、DNA塩基配列、DNAメチル化、遺伝子発現、内因性レトロウイルスなどについて検討し、3)精神疾患に関して不一致な一卵性双生児ないし同胞を対象として、脳画像により、疾患関連脳部位を調べた。
これらの研究は、各所属施設の倫理委員会の承認を得た上、参加者のインフォームドコンセントを得て行った。
結果と考察
1)石川県で、対象者にとってもメリットがあるような形での新しい双生児登録システムの構築を開始した。また、精神疾患に関して不一致な双生児のデーターベース作成に着手した。
さらに、双生児データーベースを用いて、うつ症状に関与する遺伝因子は、性格因を介して作用することを示した。
2)一卵性双生児間で、DNA塩基配列、DNAメチル化、遺伝子発現の差異を検討し、双生児間でこれらに関して不一致な遺伝子群を見出した。また、今後双生児間での差異を検討する対象となる内因性レトロウイルスを、データーベースサーチおよび実験により確認した。
3)精神疾患に関して不一致な同胞、双生児を対象として、自閉症、うつ病の不一致に関与する脳部位を見出した。また、一卵性双生児間では、側脳室後角の形態に差異があることを見出した。
これらの結果は、精神疾患に関して不一致な一卵性双生児間で、種々のゲノム差異や脳形態の差異が見られることを示している。今後、精神疾患不一致双生児のデーターベースに加え、健常双生児のデーターベースを活用することで、軽度の心の問題についても、同様の方法論でアプローチすることが可能になると思われる。
結論
本研究により、疾患に関して不一致な一卵性双生児を出発点とした精神疾患の病態研究の可能性が示された。今後の更なる研究により精神疾患の病態理解が進むと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
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