磁気共鳴画像及び遺伝子解析による統合失調症の診断法の開発

文献情報

文献番号
200500809A
報告書区分
総括
研究課題名
磁気共鳴画像及び遺伝子解析による統合失調症の診断法の開発
課題番号
H17-こころ-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大西 隆(国立精神・神経センター武蔵病院 放射線診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 亮太(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第三部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
16,599,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健常者と統合失調症を対象として遺伝子解析と磁気共鳴画像(MRI)による脳構造・機能の計測、認知機能検査を行い統合失調症関連遺伝子が脳、認知機能などの中間表現型及ぼす影響を明らかにし、バイオマーカーとして診断応用を可能とする。
研究方法
健常者、統合失調症を対象に295例でのデータ収集(遺伝子解析、認知機能検査、MRI検査)と解析を行った。
結果と考察
1)MRI研究,神経心理研究:統合失調症関連遺伝子(COMT遺伝子, BDNF遺伝子, Dysbindin)の遺伝子多型が統合失調症、健常者の脳形態に及ぼす影響を明らかにした。これら3つの遺伝子多型のうち健常者の脳灰白質形態に影響を示すのはBDNFのみで、統合失調症との関連のあるMet-BDNF保有者は海馬傍回、尾条核の灰色質体積が小さいことが明らかになった。またCOMTの遺伝子多型は統合失調症においてのみVal-COMT保有者の辺縁系の灰白質形態に強い影響を与えることを明らかにした。Dysbindinの遺伝子多型は健常者、統合失調症ともに明らかな影響を示さなかったが今後大きなサンプルで再検討を行う必要がある。拡散テンソル画像による白質評価では遺伝子多型と白質の変化の関連は認めなかったが統合失調症において、広範な白質繊維連絡の障害が存在し、それが進行性変化であることを明らかにした。神経心理学的研究では、遺伝子多型の認知機能への影響は認めなかった。
(2)分子遺伝学研究:新たな統合失調症の関連遺伝子としてanaplastic lymphoma kinase 遺伝子を見出した。躁うつ病とうつ病に関しても検討を行い、躁うつ病とBDNFの新たな多型との関連、うつ病とGem-interacting protein遺伝子との関連も見出した。これらは機能的な多型であることから、客観的診断法の確立に向けた脳構造と組み合わせた解析に用いるのに適当であると考えられる。
結論
統合失調症関連遺伝子のBDNFとCOMTは辺縁系、基底核など統合失調症と関わりの深い部位の形態変化に関与することが示された。MRIの形態変化は認知機能検査よりも鋭敏な指標かつ一般臨床に直ちに応用可能であり、遺伝子解析と組み合わせることによる診断法として有望であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
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