重度精神障害者に対する包括型地域生活支援プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500808A
報告書区分
総括
研究課題名
重度精神障害者に対する包括型地域生活支援プログラムの開発に関する研究
課題番号
H17-こころ-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 塚田 和美(国立精神・神経センター国府台病院)
  • 西尾 雅明(国立精神・神経センター精神保健研究所 )
  • 大嶋 巌(東京大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本初の実践である重度精神障害者に対する包括型地域生活支援プログラム(ACT)について、(1)臨床および医療経済学効果について実証的研究を展開し、(2)日本の地域精神保健施策の充実に寄与できる新たなシステムのあり方を提言しようとするもの。
研究方法
①’03年度にエントリーを完了したパイロット研究対象者の退院後1年予後について前後比較を検討。②無作為割り付け方式(RCT)によるACTの効果研究のエントリーを実施、地域域滞在期間、再入院率等のアウトカム指標を調査。③ACT臨床の質の追跡調査(プロセス評価)をDACT尺度により継続実施、またサービスコード体系も作成。④RCT群に関してACTおよび通常医療、福祉等にかかる費用を算出、ACTの費用対効果を調査。⑤日本でのACT実施における課題と問題点を検討。
結果と考察
①パイロット研究:41名について検討。入院日数(116.0⇒56.7)、入院回数(1.7⇒1.3)に関し前後1年間の比較で有意な減少。ベースラインとの比較でGAF(46.7⇒50.1)、薬物のCP換算値(781.4⇒633.2)に有意の変化。客観的QOLで最長居住場所が地域である人が増え、収入が増え、家族との接触頻度が減少。主観的QOLで家族関係の満足度のみ介入前後で有意に低下。②RCT研究:’06年2月末で介入群(ACT群)46名、対照群(通常ケア群)44名の割付。基本的属性では、ACT群で平均年齢(38.5歳)が通常ケア群(44.3歳)に比較して若いが、その他の変数で差異はなし。エントリー目標値に達せず要継続。③プロセス評価:DACT尺度で「人的資源」と「組織の枠組み」は期間中4点以上(5点満点)を維持。「サービスの特徴」は項目平均が3点以下。④医療経済学:6ヵ月の追跡ではRCT群間で医療費、社会資源利用費に未だ有意差なし。しかしACTのサービスを診療報酬に換算してもACT群のほうが対象群より社会コスト総額が低め(有意差なし)、要追跡。⑤わが国の課題:家族調査でACT介入による環境調整の支援が家族の協力行動や負担感、将来の不安の軽減に重要であることが示唆。一方でACTへの家族の両義的な意識の変化あり、家族支援への配慮が必要。一般企業への就労支援も重要課題。リスクマネジメントも継続検討課題。
結論
ACTのわが国での定着可能性が示唆。要継続研究。

公開日・更新日

公開日
2006-05-19
更新日
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