ラインゾーム酵素欠損症の病態解析と新しい経口治療薬の開発

文献情報

文献番号
200500801A
報告書区分
総括
研究課題名
ラインゾーム酵素欠損症の病態解析と新しい経口治療薬の開発
課題番号
H17-こころ-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 義之(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松田潤一郎(医薬基盤研究所 生物資源研究部)
  • 難波栄二(鳥取大学 生命機能研究支援センター)
  • 伊藤雅之(国立精神・神経センター 神経研究所)
  • 黒澤美枝子(国際医療福祉大学 基礎医学研究センター)
  • 大野耕策(鳥取大学 医学部)
  • 衛藤義勝(東京慈恵会医科大学)
  • 酒井規夫(大阪大学 医学部)
  • 石井 達(帯広畜産大学 畜産学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ケミカルシャペロン薬によるライソゾーム病の新しい治療法確立を目的とする。シャペロン化合物N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミン(NOEV)のβ-ガラクトシダーゼ欠損細胞、モデル動物への有効性と毒性を検討し、最終的にヒト患者に対する治療実験を目指す。他の類似疾患(クラッベ病、ゴーシェ病、ファブリー病)の治療法開発も試みる。
研究方法
NOEVの大量生産法を検討した。新しい化合物開発のため、3D-1D法による分子モデリングを行い、変異酵素分子の立体構造変化を予測した。GM1-ガングリオシドーシスのモデルとして、酵素完全欠損(重症型)ノックアウトマウスと部分欠損(遅発遷延型)トランスジェニックマウスを作成し、臨床経過を運動・姿勢、反射など14項目の組み合わせにより評価した。各項目の4段階スコア分類により、症状の時間経過を調べた。NOEVの毒性分析のため、投薬マウスの体液、臓器の分析を行った。動物実験は国際医療福祉大学の研究倫理委員会指針に従い、承認を受けた。
結果と考察
NOEVの有機合成法を改善し大量生産を開始した。分子モデリングによりヒト変異酵素蛋白質構造の予測・分類が可能となった。新しい神経学的検査により、疾患モデルマウスの自然経過を追跡した。重症型モデルマウスは生後4ヶ月から脳障害が急速に進行し、遅発遷延型モデルマウスはその2倍の時間経過を示した。そしてマウス個体へのNOEV長期投与が進行中である。一部のマウスで、発症直前から4ヶ月投与後、後肢麻痺の発症予防効果を確認した。経口投与後、NOEVが血液脳関門を通過して神経細胞に到達したことを、脳組織分析により確認した。16週までの投与マウス、非投与マウスの一部に血液生化学の異常を示した例があったが、その意義を検討中である。クラッベ病、ゴーシェ病、ファブリー病に対する治療法開発も同時進行中である。
結論
ケミカルシャペロン療法推進のため、分子・個体レベルでの実験を行った。GM1-ガングリオシドーシスモデルマウスへのシャペロン投与実験をもとに、この病気の脳病変に対する新しい治療コンセプトを確立した。経口投与した低分子シャペロン化合物は血液脳関門を通過し脳組織に入り、病態を矯正することができる。その効果判定のため、マウスの神経学的評価法も開発した。この方法は多くの他の遺伝病マウスに対する神経学的検査法としても有用である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-20
更新日
-