広汎性発達障害・ADHDの原因究明と効果的発達支援・治療法の開発-分子遺伝・脳画像を中心とするアプローチ-

文献情報

文献番号
200500798A
報告書区分
総括
研究課題名
広汎性発達障害・ADHDの原因究明と効果的発達支援・治療法の開発-分子遺伝・脳画像を中心とするアプローチ-
課題番号
H17-こころ-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 進昌(東京大学医学部附属病院精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木司(東京大学保健管理センター)
  • 笠井清登(東京大学医学部附属病院精神神経科)
  • 金生由紀子(東京大学医学部附属病院こころの発達診療部)
  • 難波栄二(鳥取大学生命機能研究支援センター)
  • 松本英夫(東海大学医学部内科学系精神神経科)
  • 山本賢司(北里大学医学部精神神経科)
  • 定松美幸(滋賀医科大学精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自閉症、アスペルガー障害等の広汎性発達障害(PDD)やADHDなど小児発達障害は合計1割近くの児童に観察され、近年その増加が懸念されている。病態の本質は高次脳機能障害にあり、遺伝要因が強く関与するほか環境要因の影響も無視できない。本申請は、過去3年間の研究をさらに発展拡充させ、これまでのPDDにADHDを加えて、1)脳画像、2)分子遺伝、3)動物実験(環境要因)の3分野で解析を進め、発達支援方法の改善・開発への応用を図る。
研究方法
1)脳画像はvoxel-based morphometry(MRI)による脳体積測定、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)による語流暢性課題遂行時の脳血流変化を測定した。2)分子遺伝研究はこれまでに蓄積した家系サンプル200例と罹患者80例を対象とした。3)動物実験では独自に開発した新生児期低甲状腺ラットを自閉症モデルとして用いた。
結果と考察
1)脳画像研究については、アスペルガー障害一卵性双生児一致例のMRI画像解析より、社会性やコミュニケーションの責任脳部位の体積減少を一致して認めたことから同部位の遺伝的脆弱性を明らかにした。一方従来重要とされてきた扁桃体の体積は一致せ
ず、環境要因を反映すると思われた。NIRS研究では、課題遂行時の前頭葉賦活が健常者では成長に応じて認められるのに対して、自閉症群では見られなかった。従って課題遂行に前頭葉を用いない方略が自閉症では発達すると示唆された。2)分子遺伝研究では、多施設共同研究により候補遺伝子を分担して解析している。確実な原因遺伝子を同定するに至っていないが、2番と7番染色体領域に資源を集中しており、いくつかの予備的結果を得つつある。3)動物実験では、自閉症類似症状を成長後に発現するモデルラットで新生児期(ヒト胎生中期に相当)にセロトニンニューロンの低形成がみられ、これをSSRIの同時投与は増悪させた。胎内環境と発達障害発生の関連で重要な示唆と考える。4)研究成果を平成18年1月700名の参加者を得て公開シンポジウムで発表した。
結論
3分野それぞれ今後につながる研究成果を得ることができた。特に脳画像の結果は診断ツールとして応用できると考えている。平成17年より発足した東大病院内「こころの発達診療部」を臨床基盤として、新しいツールも取り入れつつ、新たにADHDを対象とした施設共同研究を計画している。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
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