軸索傷害型ギラン・バレー症候群の抗神経毒素療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500794A
報告書区分
総括
研究課題名
軸索傷害型ギラン・バレー症候群の抗神経毒素療法の開発に関する研究
課題番号
H16-こころ-026
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉良 潤一(九州大学・大学院医学研究院神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 泰治(熊本大学・大学院医学研究科免疫識別学)
  • 鍋倉 淳一(岡崎国立共同機構生理学研究所・発達生理学研究系・生態恒常機能発達機構部門)
  • 水之江 義充(九州大学・大学院医学研究院細菌学)
  • 平田 和穂(九州大学・大学院医学研究院形態解析学)
  • 三野原 元澄(九州大学・大学院医学研究院神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最近、我々の研究グループでは、ギラン・バレー症候群(GBS)の先行感染病原体の一つであるCampylobacter jejuni(C. jejuni)より、DNA-binding protein from starved cells(C-Dps蛋白)を初めてクローニングし、本蛋白とGBS病態との関連の検討を行ってきた。これまでの検討により、C. jejuni感染後GBS患者の62.5%で抗C-Dps抗体は陽性であり、本蛋白はsulfatideを介して末梢神経の髄鞘、ランビエ絞輪に結合しうること、C-Dps蛋白はニューロンに分化誘導したPC12細胞株に対し細胞傷害活性を持ち、in vivoにおいてもラット坐骨神経に伝導ブロックを誘導しうることを見いだした。本年度は、C-Dps蛋白の末梢神経傷害のメカニズムを解明するため、シュワン細胞株に対する作用、並びにNaチャンネルに対する作用を検討した。
研究方法
1)シュワン細胞株であるS16を培養し、C-Dps蛋白を作用させ、上清中の遊離LDHを測定した。2)ラットの坐骨神経を露出し、C-Dps蛋白の神経内注入を行い、4時間後に灌流固定し、解きほぐし標本を作製し免疫染色を行った。3)パッチクランプ法を用いて、ラット海馬CA1錐体細胞の活動電位の変化をC-Dps蛋白の有無で検討した。
結果と考察
1)C-Dps蛋白は、S16細胞株の膜表面に結合するが、傷害作用は認められなかった。2)C-Dps蛋白を注入したラット坐骨神経では、C-Dps蛋白は髄鞘の最外層、並びにランビエ絞輪部に結合しており、ランビエ絞輪部でのNaチャンネル(Nav1.6)の集簇を低下させた。3)Nav1.6を発現しているラット海馬CA1錐体細胞での活動電位の検討では、C-Dps蛋白のNaチャンネルに対する直接作用は認められなかった。これらの結果より、C-Dps蛋白はNaチャンネルの機能そのものに直接的には作用しないものの、ランビエ絞輪部でのNaチャンネルの集簇に影響を及ぼすことで伝導障害を誘導する可能性が示唆された。今後更にそのメカニズムの解明を行っていく。
結論
C-Dps蛋白は、Nav1.6を発現するラット海馬CA1錐体細胞の活動電位に影響を及ぼさないが、C-Dps蛋白の神経内注入によりラット坐骨神経のランビエ絞輪部でのNaチャンネルの集簇を低下させた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-