骨髄間質細胞からの神経並びに筋細胞の選択的誘導とパーキンソン病・筋ジストロフィーへの自家移植治療法の開発

文献情報

文献番号
200500793A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄間質細胞からの神経並びに筋細胞の選択的誘導とパーキンソン病・筋ジストロフィーへの自家移植治療法の開発
課題番号
H16-こころ-025
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
出沢 真理(京都大学大学院医学研究科 機能微細形態学)
研究分担者(所属機関)
  • 星野 幹雄(京都大学医学研究科 腫瘍生物学)
  • 菅野 洋(横浜市立大学医学部 脳神経外科)
  • 武田 伸一(国立精神・神経センター神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨髄間質細胞は患者本人からの採取が可能であり、旺盛な増殖力を有するので細胞移植治療に必要な細胞数確保が可能である。骨髄バンクの利用も展望できることから、再生医療の細胞ソースとして最適である。我々は、ヒト骨髄間質細胞から神経細胞及び骨格筋細胞を、他の要素を含まず特異的に効率よく誘導する方法を開発した。本研究は有効な治療法の開発が切望されているパーキンソン病や筋ジストロフィーに対して、倫理問題や免疫拒絶の制限から開放された「自己細胞移植治療」の実現を目的とするものである。
研究方法
申請者らは骨髄間質細胞からドーパミン作動性ニューロンあるいは骨格筋細胞への選択的誘導法を見いだした(Dezawa et al., 2004, J. Clin. Invest; Dezawa et al., 2005, Science)。骨髄間質細胞に発生分化を制御するNotch遺伝子を導入し、サイトカインを投与すると神経細胞が選択的に誘導される。一方順序を逆にし、サイトカインを投与してNotch遺伝子を導入すると骨格筋が誘導される。本研究では骨髄間質細胞の自発的な脱分化に頼るのではなく、一定の推論に基づいて発生分化に関わるNotch細胞質ドメイン遺伝子の導入とサイトカイン刺激を順序立てて行い、極めて誘導効率の優れた系(96%前後)を開発した。
結果と考察
本研究における成果は、以下に集約される。
① 選択的誘導系であり最終産物において他の細胞の混在が極めて少ない、特に神経誘導ではグリア細胞の混在が無い。
② 骨髄間質細胞は旺盛な増殖能を持つのでドーパミン作動性ニューロン・骨格筋細胞の大量作出が可能となり、細胞数を必要とする移植医療において有利である。
④ 自家移植が可能であり免疫拒絶の心配が無い。
⑤骨髄バンクを利用出来る。
⑥ これまで培養での樹立が困難とされていた骨格筋幹細胞(=筋衛星細胞)が、骨髄間質細胞から大量に誘導可能となった。誘導された筋衛星細胞は移植するとホストの筋組織に幹細胞として生着し、繰り返される筋変性において、再度細胞移植をする必要なく繰り返し筋再生に寄与することが明らかとなった。このことは日々変性崩壊が起きている筋ジストロフィーにおいては非常に意味がある。

結論
申請者は倫理問題なく大量に培養可能な骨髄間質細胞から、神経細胞と骨格筋を極めて高い効率で誘導する画期的な方法を見出した。特に骨格筋誘導においては幹細胞にあたる筋衛星細胞が含まれており、生体由来の骨格筋幹細胞(筋衛星細胞)はこれまで培養が困難とされていたので本研究は特に大きな意義がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
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