プリオン病の画期的治療法に関する臨床研究と基礎研究

文献情報

文献番号
200500792A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病の画期的治療法に関する臨床研究と基礎研究
課題番号
H16-こころ-024
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
堂浦 克美(東北大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 達夫(福岡大学医学部 神経内科学)
  • 福島 武雄(福岡大学医学部 脳神経外科学)
  • 片岡 泰文(福岡大学 薬学疾患管理学)
  • 村本 環(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 西田 教行(岐阜大学 人獣感染研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
英国をはじめ本邦では、多数の後天性プリオン病が若年層でも発生しており、実効性のある予防治療法が求められている。本研究には二つの目標があり、一つはペントサンポリサルフェート脳室内投与療法(PPS療法)を患者に実施して、効果と安全性を検討し治療プロトコールを完成させることである。もう一つは、同治療法に取って代わる治療薬の開発と次世代型の画期的治療法の糸口を見つけることである。
研究方法
PPS療法に関しては、ヤコブ患者で臨床研究を実施し、経過を観察して効果と安全性を調べた。また、薬物動態を解析するためPPS濃度測定法を開発した。次世代型治療法開発では、末梢投与で有効なものや新規な作用を持つ治療薬開発を継続した。また、治療開発のターゲットとなる宿主因子を探索した。一方、ワクチン療法や神経再生治療のための基礎的研究を継続し、新規治療薬開発のためのプリオン神経変性機序解明と治療薬開発迅速化のためのモデルマウスを作製した。
結果と考察
合計6例の患者でPPS療法を実施し、緩徐進行の症例で治療効果が期待できること、部分てんかんや硬膜下水腫が合併症として発生することを明らかにした。一方、PPSの定量法として、除蛋白質操作を加えたsGAG Assay法が有用であった。さらに治療症例を蓄積することが必要で、そのためには同療法の実施拠点を増やすことが課題である。
新たに経口投与型化合物やプリオン高次構造緩解作用を持つ薬物を発見した。長期間治療効果を示す皮下投与型化合物については、その体内動態を明らかにし、実用化に一歩近づけた。また、新たな治療薬開発のターゲット候補となる複数の宿主因子を発見した。一方、免疫系を介さない感染干渉現象を細胞系で証明し、ワクチン療法の可能性を示した。また、神経再生治療のための神経分化能を持つ骨髄間質細胞がプリオンに易感染することを発見した。さらに、プリオンの神経変性においてfynが関与していないことを明らかにし、膜貫通型プリオン蛋白発現マウスを作出した。
結論
PPS療法について、臨床研究で効果と安全性について検討するとともに、髄液中の濃度測定法を開発した。また、新規治療薬開発で新たな有効化合物を見つけ、治療薬の標的候補となる複数の宿主因子を同定した。さらに、免疫系を介さないワクチン療法や神経再生療法のための基礎研究で成果が得られ、治療薬開発に必要なモデルマウスを作製した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
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