アミロスフェロイド仮説によるアルツハイマー病病態解明と臨床応用に関する研究―高等動物モデル構築と生体リアルタイム観測法開発によるアプローチ

文献情報

文献番号
200500787A
報告書区分
総括
研究課題名
アミロスフェロイド仮説によるアルツハイマー病病態解明と臨床応用に関する研究―高等動物モデル構築と生体リアルタイム観測法開発によるアプローチ
課題番号
H16-こころ-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
星 美奈子(株式会社三菱化学生命科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 和也(大阪大学 大学院工学研究科)
  • 村松 慎一(自治医科大学 内科学)
  • 金城 政孝(北海道大学 電子科学研究所)
  • 佐藤 一紀(福岡女子大学 人間環境学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、強力な神経毒性を持つアミロスフェロイドを入り口に、異分野横断による新たな手法開発から、アルツハイマー病病態解明と臨床応用展開を目指す。
研究方法
倫理面に配慮し(1)特異的抗体による剖検脳検証、(2)毒性中和抗体の作製、(3)Aβ凝集プロセス観測法の構築、(4)高感度タンパク質検出システムの構築、(5)アミロスフェロイド凝集経路を支配する原理の解明、(6)アミロスフェロイド毒性発現にカルパイン活性化が果たす役割の解析、(7)霊長類神経細胞に対するアミロスフェロイド毒性の検証、(8)老齢サルの学習訓練の実施と神経遺伝子導入ベクター開発、を行った。
結果と考察
(1)アルツハイマー病脳に特異的にアミロスフェロイド(類似体)が存在することを、アミロスフェロイド特異的抗体を用いた生化学的、免疫組織化学的解析から示した。(2)アミロスフェロイド神経毒性を非常に有効に抑制する中和抗体を複数確立した。(3)アミロスフェロイド形成過程を定量的に観測できるリアルタイム観測手法の構築に成功した。(4)プリオンをモデル系に生体内タンパク質高感度検出法を構築した。(5)発症の分岐点と考える「Aβモノマーが線維になるか、アミロスフェロイドになるか」を制御する原理を試験管内で見出し、脳でのAβ凝集の制御に関する新たな仮説を示した。(6)アミロスフェロイド毒性にカルパイン活性化が関与することをモデル動物等により示した。(7)サルES由来神経細胞を用い、アミロスフェロイドが霊長類神経細胞に毒性があることを示した。(8)アデノ随伴ウィルスベクターによる効果的遺伝子導入システムを構築し、現在学習訓練を行っている老齢カニクイサルにアミロスフェロイド形成処置を開始した。
結論
本研究でアミロスフェロイドが生体で存在することがついに示され、海外のアルツハイマー病研究者からも我々の研究を指示する結果が得られている。本研究で得られた中和抗体を基にアルツハイマー病治療薬を開発する計画が進行するなど、老人医療に貢献する方向に研究が展開しており、アルツハイマー病の治療・診断・予防に大きく貢献することが期待される。リアルタイム観測法からは、新たな非侵襲的アルツハイマー病画像診断法が生まれる可能性があり、今後その方向へと研究を展開する。ヒト近縁の霊長類神経細胞は、より効果的で副作用が低い治療薬開発に利用可能である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
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