患者特性と夜間看護業務量の関係に関する研究

文献情報

文献番号
199700077A
報告書区分
総括
研究課題名
患者特性と夜間看護業務量の関係に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
菊池 志津子(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 星野桂子(国立医療・病院管理研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
夜間看護業務の実証的研究について、各看護要員の働き易さ、患者の立場、経済的な問題など、複数の視点から研究する必要があるが、何よりも、夜間どのような業務が発生し、どのように対処しているかの実態を明らかにすることが重要と思われる。本研究は、各種勤務形態の善し悪しを議論するのではなく、様々な議論の基礎データとなるであろう、患者特性別夜間看護業務量を明らかにすることを目的とする。
研究方法
全国の一般病院から、国厚生省全数、医療法人と個人病院20分の1、その他5分の1の割合で無作為抽出し、各病棟別の夜勤体制と看護要員数、患者数に関する調査票を郵送した。調査票は、調査可能病棟数と夜勤体制の実態を把握する観点から分析した。開設者別、病床規模別、夜勤体制別に施設数、病棟数、病床数、各種患者特性別患者数や調査可能数を集計した。
結果と考察
調査票は997発送し、回収されたのは449病院で回収率は45%である。これらのうち有効回答が得られたのは439病院44%である。開設者別回収率は国厚生省87.4%、医療法人23.6%、個人12.4%、その他41.2%である。この結果、4区分別の一般病院数に対する回収病院割合は、国厚生省87.4%、医療法人1.1%、個人0.7%、その他8.6%である。 次年度の調査については200病棟程度を予定していたが、今回のアンケート調査で有効回答を得た病棟数は2507、調査協力可能病棟数は1253あり、夜勤体制別でも調査協力可能病棟と不可能病棟は、ほぼ同数であった。次に、夜勤体制分析の結果は次の通りである。夜勤体制の二交替は比較的規模が小さい私的病院から浸透している。全国の夜勤体制別推計病院数割合は、三交替病棟のみ41.9%、二交替のみ43.6%、二交替と三交替の混在6.2%、三交替とその他混合0.2%、当直のみ8.2%である。推計病床数割合では、三交替61.3%、変則三交替2.9%、二交替28.3%、二交替と三交替の混合4%、当直1%、その他2.6%である。三交替と二交替で看護要員の配置状況を比べると、病棟当たりの人数は三交替でも二交替でも大差はないが、二交替は准看護婦や他の看護要員の割合が高い。1病棟当たりの夜勤者数は二交替と三交替で差があるとは言えない。三交替と二交替で患者特性を比較すると、二交替で65歳以上や長期入院者の割合がやや多い傾向にある。看護観察度と日常生活自由度別患者数の中の重症割合は三交替と二交替で大差はなく、二交替にA-?が若干多い。診療科別患者数は、二交替に内科系と理学診療科、三交替に外科系がやや多い傾向が見られるが、外科系にも二交替があり、内科系にも三交替がある。以上の結果をみると、二交替は療養型タイプの病棟にやや多いように感じられる。しかし、療養型タイプの病棟から先に二交替を導入したことも考えられる。事実、心臓血管外科や脳神経外科の患者でも8%程度は二交替の病棟に入院している。「特定の患者特性は二交替勤務ができない」とは言えない。また、夜勤体制は診療科別患者数との関係よりも開設者や病床規模との相関が強い。このような実態は、「二交替制導入の障害となるのは、患者特性ではなく、看護要員の働き方の自由度拡大を妨げる様々な規制、あるいは診療報酬のあり方、病院幹部や看護職員自身の考え方である」可能性を示唆する。
各病院でどのような病棟にどのような夜勤体制が相応しいのかを検討する場合、現行の看護料支払い体系やいわゆる「二八体制」に縛られ、看護管理者の裁量で決められる部分は小さい。しかし、これから先、病院に対するニーズが多様化したり、マンパワーや人件費など限られた資源の中で運営をしていかなければならない状況が来るであろうことは十分に予想される。看護要員のライフスタイルあるいは生き方に合わせて勤務体制を多様化することも必要である。従来の規制の枠を越えて、夜勤体制と看護料の支払方法、看護管理のあり方を柔軟に考えなければならない。ここで重要なのは、二交替と三交替のどちらが優れているかではなく、どのような患者にどの程度の看護を提供すれば合理的であるのかを検討することである。次年度に計画している患者特性別の夜間看護業務量調査は、二交替と三交替でどう患者特性が違うかなどを比較するだけでなく、患者特性と夜間看護業務量の関係を分析し、夜間看護業務量の標準的な姿を推計することも考えなければならない。
結論
夜間の看護要員必要数を算定する基礎データを得るため、各病棟の患者特性と夜間看護業務量調査を実施することにしている。今年度は、全国の一般病院から997施設を無作為抽出して、調査協力の打診と夜勤体制の実態把握を兼ねたアンケート調査を実施した。この結果、協力可能病棟は調査予定数の6倍以上であり、次年度調査は実施できることが分かった。また、夜勤体制別の分析では、二交替は規模が小さい私的病院で多く導入されていること、二交替には高齢者や長期入院、内科と理学療法科系の入院が多い傾向があることなどが明らかになった。これらは二交替が可能な病棟の特徴なのか、二交替を導入した病棟の特徴なのかは分からなかった。次年度調査で、患者特性別夜間看護業務量と同時に、夜勤体制と看護業務量の関係も明らかにできるような調査票を作成する必要があると考えられた。

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