精神療法の実施方法と有効性に関する研究

文献情報

文献番号
200500784A
報告書区分
総括
研究課題名
精神療法の実施方法と有効性に関する研究
課題番号
H16-こころ-014
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大野 裕(慶應義塾大学保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 和臣(鳴門教育大学教育臨床講座)
  • 坂野 雄二(北海道医療大学心理科学部)
  • 中村敬(東京慈恵会医科大学第3病院精神神経科)
  • 中川 彰子(川崎医科大学精神神経科学教室・九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
  • 原田 誠一(国立精神・神経センター)
  • 古川 壽亮(名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野)
  • 山内 慶太(慶應義塾大学看護医療学部)
  • 岡本 泰昌(広島大学大学院医歯薬総合研究科精神神経医科学)
  • 石井 朝子(東京都精神医学総合研究所ストレス障害研究部門・臨床心理学)
  • 村井 靖児(聖徳大学音楽文化学科音楽療法コース)
  • 仲秋 秀太郎(名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野)
  • 熊野 宏昭(東京大学医学部附属病院心療内科)
  • 藤澤 大介(桜ヶ丘記念病院)
  • 衣笠隆幸(広島市精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
個々の精神療法の内容とわが国にける実施状況レビューするとともに、代表的な精神療法のマニュアルを作成し、その有効性を体系的に検証する。
研究方法
1.現在使用されている可能性のある43の精神療法のレビューを行った。2.26の精神療法の実施状況について3000施設にアンケートを配布した。同時に米英における精神療法の実施状況を調査した。3.うつ病、神経症性障害、アルコール依存、パーソナリティ障害など主要な精神疾患に対する精神療法のマニュアルを作成し効果研究を開始した。
結果と考察
1.精神療法について概説した。わが国では、支持的精神療法、簡易精神療法が突出して高く、効果が実証された精神療法の施行は不十分であった。約40%が精神療法の実施が十分でないと回答し、a.時間、b.診療報酬、c.スタッフの力量を理由としてあげていた。今後充実させたい精神療法の第1位は認知行動療法であった。この他に、英米の精神科医療における精神療法の現状を検証した。
主要な精神疾患に対する精神療法の効果に関して、うつ病では、マニュアルを活用した認知行動療法で成果が上がる可能性が示唆された。社会不安障害に関しては、認知行動療法及び入院森田療法で効果がある可能性が示された。強迫性障害に関しては、対照群を設定した研究で行動療法には薬物療法にまさる効果があることが実証された。統合失調症及びアルコール依存に関してもマニュアルを作成した。パーソナリティ障害に関して、弁証法的行動療法(DBT)が有用である可能性が示唆され、精神分析的精神療法も検討を開始した。音楽療法についても認知症及び統合失調症に対して検討を開始した。
結論
1.現在わが国で行われている可能性のある主要な精神療法の概要を作成したことにより、精神療法の内容について容易に把握できるようになった。
2.現在わが国で行われている精神療法の全国的な状況と問題点が明らかになったことによって、今後の行政の対応を現状にもとづきながら検討することが可能になった。
3.主要な精神疾患に対する精神療法のマニュアルを作成し、効果研究を開始し、一定の成果が上がっていることから、精神療法を含めた広い視野から今後の精神医療の計画を策定できる可能性が高まった。本研究では医療経済的な視点からの検討も行っており、この成果も医療政策の決定に資するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-05-24
更新日
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