高機能広汎性発達障害にみられる反社会的行動の成因の解明と社会支援システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
200500781A
報告書区分
総括
研究課題名
高機能広汎性発達障害にみられる反社会的行動の成因の解明と社会支援システムの構築に関する研究
課題番号
H16-こころ-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石井 哲夫(社団法人日本自閉症協会)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 晃資(目白大学人間社会学部)
  • 白瀧 貞昭(武庫川女子大学大学院心理臨床学)
  • 須田 初枝((福)けやきの郷)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高機能広汎性発達障害(HPDD)やアスペルガー症候群(AS)についての社会的関心が急速に高まっている。本研究では、HPDDの人々にみられる反社会的行動について、1.診断マニュアルと精神医学的併存症に関する研究、2.早期支援システムに関する研究、3.青年期・成人期における社会支援システムの構築に関する研究、4.福祉施設間の連携に関する研究など、4つの研究が行われた。以下、その順に従って述べる。
研究方法
1.発達障害者支援センターおよび精神科病院でかかわる反社会的行動を有するHPDDの人々の対応と臨床診断を調査した。2.乳幼児健康診査システムを活用してHPDDの早期診断・療育のあり方を調査した。3.長期にわたって治療的かかわりを継続してきたHPDDの人々について、社会生活上の困難さを調査した。司法関係者の協力を得て事件発生の状況を調査し、マスコミの取り上げ方をデータベースで調べた。4.福祉施設と関連諸機関との連携のあり方を調査し、HPDDの人々のライフステ-ジに対応した支援について検討した。
結果と考察
1.発達障害者支援センターで相談を受理したケースには、反社会的行動によって対応が困難となっている例が少なからずあった。引きこもりやこだわり行動が長期化し、家族に対する暴言・暴力、器物破損が繰り返されている例が多かった。精神科医療施設におけるHPDDの人々への対応は、必ずしも適切ではなかった。2.HPDD児は、1歳半健診でハイリスク状態が予測されると、3歳頃には早期発見・診断が可能となることが明らかになった。支援体制の構築を急務とする地方自治体へ、必要な情報・人材を提供し得る可能性が示唆された。3.危機的状況への対応は時空間システムを拡大して考えざるを得ず、関連諸機関の機能的連携が不可欠であることが明らかになった。4.福祉施設間の連携を継続的に行うことによって、家族の不安を解消させ、子どもを受容する姿勢が芽生えることが確認された。
結論
HPDDの人々は、乳幼児期から累積されてきた冷遇体験が被害的念慮に発展し、些細な事柄をきっかけにして思わぬ事件に及ぶ例が多い。すべてのライフステージを視野においた社会的支援システムの構築が急務であると共に、HPDDの人々に対応し得る精神科医療の質的転換が求められている。専門性の高い児童精神科医療の確立が焦眉の急となっている。

公開日・更新日

公開日
2006-05-19
更新日
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