児童思春期精神医療・保健・福祉の介入対象としての行為障害の診断及び治療・援助に関する研究

文献情報

文献番号
200500780A
報告書区分
総括
研究課題名
児童思春期精神医療・保健・福祉の介入対象としての行為障害の診断及び治療・援助に関する研究
課題番号
H16-こころ-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 万比古(国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 豊爾(岡山県立岡山病院)
  • 奥村 雄介(関東医療少年院)
  • 犬塚 峰子(東京都児童相談センター)
  • 近藤 直司(山梨県精神保健福祉センター)
  • 藤岡 淳子(大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 原田 謙(信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部)
  • 吉川 和男(国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部)
  • 冨田 拓(国立武蔵野学院)
  • 市川 宏伸(東京都立梅ヶ丘病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、近年わが国で注目されるようになった児童思春期の行為障害の成因及び病態を明確にし、合理的な診断基準を定め、特殊治療や地域専門機関の連携など根拠のある対応法を明示した標準的な診断と治療の指針作りを目的として実施されている。
研究方法
研究班は、『改訂版CDCL』の臨床応用に取り組むこと、性非行男子への性非行評価・治療プログラムの開発に取り組むこと、全国児童相談所が扱った非行相談対象者を対象に養育者変更および虐待の影響について検討すること、ADHD及び広汎性発達障害と行為障害の関連を解析すること、矯正処遇と精神医療との連携に関する事例検討、行為障害のMultisystemic therapy (MST)の日本語版マニュアル作成に取り組むこと、地域専門機関による連携システム設置および運営に関するガイドライン に基づく市川モデルと大分・別府モデルの実験的運用、医療機関における行為障害治療の現状を把握するための全国調査等を通じたわが国の行為障害介入のあり方について検討する。
結果と考察
『改訂版CDCL』の判別分析によりCDCLが行為障害の判別に利用可能であること、性非行男子プログラムの参加者が行動変容に能動的に取り組むようになること、全国児童相談所が扱った非行相談対象者の調査から虐待に加えて養育者の変更も非行の発現の契機となりうること、広汎性発達障害例では「家庭限局型」の行為障害症状が有意に多いこと、少年自立支援施設退所後6ヶ月の家裁係属の有無には「家族の犯罪歴・非行歴があること」が関与すること、市川モデルと大分・別府モデルの参加者は相談機関が医療機関と連携しやすくなるなどの理由で満足度が高いこと等が明らかとなった。
結論
行為障害の診断及び数量化に寄与するCDCLの臨床利用が可能になりつつあり、また治療・援助法に関して、性非行の評価・治療プログラムの開発、地域関係機関による対応・連携システムの有用性の実践的証明と精神医療体系の中での行為障害診療の留意点の解明が進み、さらにはMSTが試行されようとしている。また、虐待、養育者変更、発達障害、家族の犯罪歴・非行歴といった要因が行為障害のリスクを高める実態も統計手法を適切に用いた研究から明らかになってきた。これらの成果をまとめて最終年度は『行為障害の診断・治療ガイドライン』の作成に取り組む計画である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
-