重症ストレス障害の精神的影響並びに急性期の治療介入に関する追跡研究

文献情報

文献番号
200500779A
報告書区分
総括
研究課題名
重症ストレス障害の精神的影響並びに急性期の治療介入に関する追跡研究
課題番号
H16-こころ-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 辺見 弘(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 奥山 眞紀子(国立成育医療センター)
  • 内富 庸介(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
  • 橋本 謙二(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 森田 展彰(国立大学法人筑波大学大学院)
  • 松岡 豊(国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重度ストレス障害の範例的な疾患重度ストレス障害は、体験それ自体の衝撃もさることながら、体験に関する予期、責任、その後の処理、社会的サポート、スティグマ等によってその経過と病像が大きく影響される。そのために、本研究班では交通事故被害者、がん告知などの追跡研究を通じてこれらの要因を明らかにすると共に、施設に収容された被虐待児童の経過研究と介入、ホーム収容後の高齢者のトラウマ体験の経過研究を行う。
研究方法
①交通外傷患者の精神的ストレスについて、その自然経過、回復過程、精神疾患有病率などを明らかにし、精神疾患の予測因子や防御因子などについて心理・社会・生物学的に検討することを目的として、前向きコホート研究を行った。②子どもの単回性トラウマのトラウマ関連症状を検討した。③術後3年以上経過した乳がん生存者を対象に、がんに関連した侵入性想起の有無による海馬扁桃体体積の測定を行った。④その他、関連領域のトラウマ被害者の研究を行った。
結果と考察
平成17年12月31日時点までに、受傷後1ヶ月時点(n=73)で大うつ病性エピソード、アルコール関連障害、部分PTSDがそれぞれ17.8%、PTSDが6.8%、広場恐怖と強迫性障害がそれぞれ4.1%であった。予備的ではあるが、先に報告されたわが国の地域住民における精神疾患の12ヶ月有病率に比し、交通外傷患者における大うつ病は4-6倍、PTSDは13-20倍と高いことが示唆された。子供では、ASDの出現頻度は21.9%、PTSDの出現頻度は18.8%であった。長期予後は、女子よりも男子のほうが予後不良であった。がん告知有る群は無い群と比較して有意に左海馬及び左扁桃体の体積が小さいことを見出した。
結論
交通事故後の精神健康の悪化は一般人口の数倍から10数倍に上っており、臨床的に大きな問題である。子供のトラウマ反応は成人と同様に診断可能である。がん告知のトラウマの影響によって脳の一部の体積が減少する。

公開日・更新日

公開日
2006-06-27
更新日
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