自閉症の病態診断・治療体制構築のための総合的研究

文献情報

文献番号
200500776A
報告書区分
総括
研究課題名
自閉症の病態診断・治療体制構築のための総合的研究
課題番号
H16-こころ-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加我 牧子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 稲垣真澄(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 大野耕策(鳥取大学医学部脳神経小児科)
  • 杉江秀夫(浜松市発達医療センター)
  • 橋本俊顕(鳴門教育大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 自閉症スペクトラムにみられる①言語発達の遅れとことばの不適切な使用(語用の質的異常)、②対人的社会性の異常、③行動様式の融通のきかなさ、あるいは物事へのこだわり症状につき、背景に存在する脳機能障害を明らかにすること、さらに早期診断と治療体制の構築を図ることを目的とした。
研究方法
 対人的社会性の基礎となる自己・他者の弁別という認知機能につき、自閉症児・者で事象関連電位検査を行い、その特徴的変化を検討した。自閉症と診断された症例の身体的特徴について後方視的に調査し、自閉症の合併が生じうると報告されている遺伝性疾患についてスクリーニング検査を行った。また行動異常のモデル動物の解析を加えた。
結果と考察
 自閉症児は生後1ヶ月から頭囲が拡大し、二指と四指の長さの割合が異なることが判明した。10歳以上の年長児を中心とする自閉症群で,自分の顔を見ている時のP350振幅が,既知顔、未知顔に対する振幅との間に有意差がなかった。顔の既知性や自己認識に関係する脳領域の活動低下が考えられ、自閉症のコミュニケーションの困難さに影響している可能性がある。自閉症スペクトラムにおいてクレアチン代謝異常症、Adenyylosuccinase欠損症、染色体15q11-13の重複解析を行ったが陽性例はなかった。一方、Molar Tooth型小脳・脳幹形成異常9例(Joubert症候群6例、COMA2例、Myotubular Myopathy1例)のうち2例(22.2%)が対人関係およびコミュニケーションの発達に質的異常があり、非定型自閉症と考えられた。自閉症を伴いやすい遺伝病で共通の脳の発達異常を来たす疾患は、病因と病態の理解に重要である。今後、小脳・脳幹の形成障害がみられる疾患の自閉症症状抽出と特徴を明らかにする必要がある。
自閉性障害におけるFMR-1発現が易興奮、言語症状に関わりを持つ可能性が示唆された。
bvマウスの知覚過敏の検討により、自閉症児のフラッシュバックの背景モデルとしての可能性が明らかになった。
結論
(1) 早期診断のため理学的所見の確立に向け検討中である。
(2) コミュニケーション障害の基盤にある顔認知の特徴を明らかにした。
(3) 合併しやすい疾患の病変特徴を明らかにし病態の検討を進めている。
(4) 自閉症の症状を動物モデルで明らかにしつつあり、治療のトライアルが可能になった。

公開日・更新日

公開日
2006-05-09
更新日
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