アルツハイマー病の神経細胞死を誘導する遺伝子機能の解析と抑止法の開発

文献情報

文献番号
200500758A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の神経細胞死を誘導する遺伝子機能の解析と抑止法の開発
課題番号
H15-こころ-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田平 武(国立長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 大八木保政(九州大学医学部付属病院)
  • 工藤 喬(大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学講座)
  • 巻淵隆夫(独立行政法人国立病院機構さいがた病院)
  • 武田雅俊(大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
36,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は細胞内・外のアミロイドベータタンパク(Abeta)による神経細胞死及びシナプス障害の機構を明らかにする中から、それを抑止する方法を開発することを目的とする。
研究方法
1)AB-DIPトランスジェニックマウスの作製
AB-DIPのin vivoでの機能を見る為にThy-1 promotorに制御される AB-DIPトランスジェニックマウスを作製する。
2)細胞内 Abetaの分解促進による細胞死抑止
合成 Abetaを浸透圧法により細胞内に取り込ませ、プロテアソーム分解を受ける系を作製し、これを用いてAbeta分解を促進する薬物を見出す。
3)小胞体ストレス抑止による細胞死抑止
昨年見出したBIP誘導剤BiXをラット脳室内に投与し中大脳動脈閉塞による脳梗塞領域が縮小するか調べる。
4betaセクレターゼ活性阻害剤の開発
リコンビナントbetaセクレターゼ(BACE)を作製し、in vitroでBACE活性を調べる系を確立し、これを用いてBACEが Abetaペプチドを切断するか否かを調べる。
5)細胞内 Abetaの局在
細胞内 Abetaの局在を電顕レベルで検討する。
結果と考察
1)Thy-1プロモーターをもつAB-DIPトランスジェニックマウス作製に必要な遺伝子構築を行った。AB-DIPトランスジェニックマウスが得られれば、APPトランスジェニックマウスと掛け合わせることでAbetaによる細胞死促進の動物モデルが得られると期待される。この動物モデルができれば、神経細胞死を標的とする抑止薬の開発が促進される。
2)細胞内Abeta分解を促進する薬物として塩酸アポモルフィンを見出した。塩酸アポモルフィンの効果がAPPトランスジェニックマウスで確認できれば、アルツハイマー病の予防・治療薬となり得る。
3)シャペロン誘導剤BiXはラット中大動脈閉塞による梗塞病巣を縮小した。またBiXはAbeta産生を減少させた。BiXはAbeta産生抑制とERストレス緩和作用があり、その両面からアルツハイマー病の予防・治療薬となり得る。
4)Abetaの細胞内局在を同定するに至らなかった。
5)betaセクレターゼ(BACE)は Abeta10-11及び34-35の間でこれを分解し、 Abeta29-40ペプチドはBACE活性を阻害することを見出した。Abeta29-40のBACE活性阻害作用をさらに詳細に検討することで、予防・治療薬開発が期待される。
結論
 アルツハイマー病の神経細胞死を抑止する新たな方向性をもった治療法の手がかりを受けることができた。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200500758B
報告書区分
総合
研究課題名
アルツハイマー病の神経細胞死を誘導する遺伝子機能の解析と抑止法の開発
課題番号
H15-こころ-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田平 武(国立長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 大八木保政(九州大学医学部付属病院)
  • 工藤 喬(大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学講座)
  • 巻淵隆夫(独立行政法人国立病院機構さいがた病院)
  • 武田雅俊(大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は細胞内・外Abetaによる神経細胞死及びシナプス障害を明らかにする中から、それを抑止する方法を開発することを目的とする。
研究方法
1.Abetaと結合し細胞死に関わる分子をtwo hybrid systemにより明らかにし、その機能をin vitro、in vivoで解析、トランスジェニックマウスを作製し、in vivoモデルを確立する。
2.細胞内Abetaによるp53を介する細胞死を明らかにし、細胞内Abeta分解促進剤による細胞死抑止効果を調べる。
3.小胞体ストレスに際し誘導されるシャペロンGRP-78を誘導する薬剤を開発し、そのin vitro、in vivoでの細胞死抑止作用及びAbeta産生に及ぼす効果を明らかにする。
4.試料包埋剤を色々工夫し、電顕レベルで細胞内Abetaの局在を明らかにする。
5.シナプス障害を直接起こすとされるAbetaオリゴマーのin vivoでの存在、及びその分子種を質量分析等により明らかにする。
結果と考察
1.Abetaと結合し細胞死を誘導する新規物質AB-DIPを見出した(特許出願)。AB-DIPはAbeta共存により細胞死を増強し、そのsiRNAは細胞死を抑制した。現在、in vivoでの作用を調べる為にトランスジェニックマウスを作製している。
2.Abetaはp53のプロモーターに結合し、それを直接活性化して細胞死を誘導した。細胞内Abeta分解を促進するものとしてアポモルフィンを見出した。アポモルフィンはH2O2処理、細胞内Abeta増加/p53を介する細胞死を抑止した(特許出願)。
3.GRP-78を誘導するBiXを見出し、BiXはin vitro、in vivoで小胞体ストレスを介する細胞死を抑止するとともに、Abeta産生を抑制した(特許出願準備)。
4.細胞内Abetaの局在を同定するに至らなかった。
5.in vivoでシナプスを障害するAbetaオリゴマーの同定に至らなかった。代わりに、Abeta42産生を抑える新しいNSAIDを見出し、Abetaの分子種がセクレターゼを抑制することを見出した。
細胞内Abetaと細胞死に標的を当て研究した結果、いくつかの新しい側面が明らかになった。今後、これらの中から新しいアルツハイマー病の予防・治療法が生まれると期待される。
結論
1.Abetaと結合し細胞死を誘導する新規物質を見出した。
2.細胞内Abeta分解を促進する薬剤を見出した。
3.小胞体ストレスを緩和する新規薬剤を見出した。

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500758C