気管支喘息の慢性化・難治化の予防を目指す、早期介入療法のための早期診断法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200500747A
報告書区分
総括
研究課題名
気管支喘息の慢性化・難治化の予防を目指す、早期介入療法のための早期診断法の確立に関する研究
課題番号
H15-免疫-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
福田 健(獨協医科大学内科学 呼吸器・アレルギー)
研究分担者(所属機関)
  • 足立 満(昭和大学医学部第一内科)
  • 棟方 充(福島県立医科大学呼吸器科)
  • 秋山 一男(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 井上 洋西(岩手医科大学第三内科)
  • 大田 健(帝京大学医学部内科 呼吸器内科)
  • 三嶋 理晃(京都大学医学部呼吸器内科)
  • 中島 裕史(千葉大学大学院医学研究院遺伝子制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
17,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究内容は、1)喘息発病初期の臨床像を検討する後ろ向き研究,2)前向き研究,3)咳喘息の臨床的検討,4)早期診断に向けた従来の検査法の見直しと新しい検査法の開発、5)早期診断基準策定。
研究方法
1)「後ろ向き研究・症例選択基準」を満たす388症例の調査票を解析。2)診断基準妥当性評価用モニター症例として継続診療中。3)アトピー型喘息及び咳嗽患者に抗原誘発試験を施行。4)早期診断における末梢気道呼吸機能、呼気NO、HRCT、終夜睡眠脳波(PSG)測定意義の検討。Th1/Th2均衡に影響する形質細胞様樹状細胞(PDCs)の機能解析、気管支粘膜生検組織におけるamphiregulin発現解析、Churg-Strauss syndrome(CSS)の発症予知についての検討。
結果と考察
1)発症時の症状は咳嗽79%、喘鳴69%、呼吸困難49%。高率に認めた検査値異常は、気道過敏性亢進99%、喀痰中好酸球陽性82%。%V50と %V25の健常人と早期喘息患者のカットオフ値は各々72%、52%。2)以上より診断基準を、1.発作性の喘鳴ないし呼吸困難ないし咳の反復。2.以下の1、2のいずれかを満たす。1 BHR試験陽性、2、A:喀痰好酸球増多(3%以上)または、B:%V50<70%または%V25<50%、または、C:気管支拡張薬による症状の改善(咳単独の場合はCを満たす必要あり)3.他の疾患の鑑別とした。3)カプサイシン感受性はアトピー咳嗽で亢進、喘息では正常。4)Master Screen IOSで早期喘息では末梢呼吸機能増加、喘息・咳喘息と他の慢性咳嗽の呼気NOのカットオフ値は38.8ppb、IL-10産生CD25陽性CD4陽性細胞数はCSS発症予知指標になる可能性、amphiregulinは早期喘息でも発現し、他の疾患との鑑別に有望、呼気HRCTでのLAA%増加が咳喘息と健常人を鑑別する可能性あり、SAS合併喘息ではREM睡眠減少、PDCsに特異的なIL-4依存的IFN-γ産生誘導にはStat6依存的Stat4が関与することが示された。
結論
発症初期での喘息診断を可能とする診断基準(案)を策定した。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200500747B
報告書区分
総合
研究課題名
気管支喘息の慢性化・難治化の予防を目指す、早期介入療法のための早期診断法の確立に関する研究
課題番号
H15-免疫-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
福田 健(獨協医科大学内科学 呼吸器・アレルギー)
研究分担者(所属機関)
  • 足立 満(昭和大学医学部第一内科)
  • 棟方 充(福島県立医科大学呼吸器科)
  • 秋山 一男(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 井上 洋西(岩手医科大学第三内科)
  • 大田 健(帝京大学医学部内科 呼吸器内科)
  • 三嶋 理晃(京都大学医学部呼吸器内科)
  • 中島 裕史(千葉大学大学院医学研究員遺伝子制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究内容は、1)喘息発病初期の臨床像を検討する後ろ向き研究、2)前向き研究、3)咳喘息の臨床的検討、4)早期診断に向けた従来の検査法の見直しと新しい検査法の開発、5)早期診断基準策定
研究方法
1)発病時の臨床像が追跡可能な喘息確定症例を計400例選出、調査票に記入。
2)喘息疑い新患症例を早期診断基準妥当性評価のモニター症例とした。
3)喘息、咳喘息、アトピー咳嗽患者にカプサイシンや抗原誘発試験を施行。
4)早期診断での末梢気道呼吸機能、気道過敏性(BHR)試験、呼気NO、気管支粘膜生検組織の病理学的解析、HRCT、終夜睡眠脳波(PSG)測定の意義の検討。Churg-Strauss syndrome(CSS)の発症予知指標の検討、Th1/Th2均衡に影響する形質細胞様樹状細胞(PDCs)の機能解析。
結果と考察
1)解析対象症例は388例。発症時の症状は咳嗽79%、喘鳴69%、呼吸困難49%。高率に認めた検査値異常は、BHR99%、喀痰中好酸球陽性81%。%V50<70%、 %V25<50%で健常人と喘息を高い感度で分離できた。以上より、早期喘息の診断基準を、1.発作性の喘鳴ないし呼吸困難ないし咳の反復。2.以下の1、2のいずれかを満たす。1.BHR試験陽性、2.A:喀痰好酸球増多(3%以上)、または、B:%V50<70%または%V25<50%、または、C:気管支拡張薬による症状の改善(咳単独の場合はCを満たす必要あり)、3.他の疾患の鑑別、とした。
3)喘息、咳喘息、アトピー咳嗽の鑑別はカプサイシン閾値、BHR、抗原吸入後の咳回数により可能。
4)末梢気道閉塞性障害は慢性咳嗽疾患では早期喘息で強い、測定機器の普及度の関係で診断基準に入れていないが、呼気NOは喘息・咳喘息と他の疾患の鑑別に有効。気管支生検組織でのリン酸化Smad2/Smad7やamphiregulin発現、HRCTでのLAA%増加は早期喘息の補助診断に有効。PSGによりSAS症例に紛れた喘息の発見が可能。BHRの程度、CD25陽性CD4陽性細胞比率、IL-10産生能等でCSS発症予知の可能性あり、PDCs機能低下がTh2優位に傾ける可能性ある。
結論
発症初期での喘息診断を可能とする診断基準を策定した。これによる吸入ステロイド療法導入時期の早期化は喘息の慢性・難治化防止に有用。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500747C

成果

専門的・学術的観点からの成果
不明であった成人喘息の発病時の臨床像を明らかにした。この時点では現行の喘息診断目安を満たさない場合が多いが出現頻度の高い症状と検査所見の組み合わせにより、この時期でも他の喘息類似疾患と鑑別可能であることが判明したため、喘息早期診断基準案を作成した。本案は日本アレルギー学会、日本呼吸器学会、日本医学会等で注目され喘息診断のシンポジウムでの発表を依頼された。また呼気NO測定が早期喘息発見に極めて有用である点も明らかにした。この成果はJ. Allergy Clin Immunolに掲載され注目された。
臨床的観点からの成果
本研究で作成した喘息早期診断基準により成人喘息を現行より早い段階での診断が可能になった。安価な測定機器の普及により呼気NO測定で集団の中から効率的に喘息患者を発見できる可能性が大きい。気管支粘膜生検組織の免疫組織学的解析,CT画像解析は早期喘息の補助診断になる可能性,喘息合併Churg-Strauss症候群の発病予知,睡眠時無呼吸症候群に紛れた喘息の発見方法,Th1/Th2不均衡発現予知についても新知見が得られた。以上の成果により喘息早期診断は現在より早い段階での早期介入療法を可能とする。
ガイドライン等の開発
本研究では成人喘息の早期診断基準案を作成した。喘息専門医療機関のみならず一般医療機関でも使えるように、特殊技術あるいは高価な測定機器を必要とする検査項目は盛り込んでいない。この基準案の診断率を後ろ向き研究組み入れ388症例で検討したところ98%であった。本案は平成17年10月21日に開催された日本アレルギー学会のシンポジウムで公表され多くの専門家によって議論された。日本アレルギー学会の喘息治療ガイドラインにも次期改訂時に盛り込まれるよう申請していく予定である。
その他行政的観点からの成果
慢性・重症喘息における頻繁な症状増悪は、患者の学習、勤労意欲を損なわせ、発作に対する不安から患者のQOLも低下する。未だに年間3000例前後に達する喘息死、また、頻繁に救急外来を受診する患者はこうした患者に多い。本研究で策定した喘息早期診断基準によって、喘息を発症後間もない段階で診断し、早期介入療法を行うことが一般化すれば、慢性・重症患者は激減し、有病率そのものも低下すると予想される。その結果、国民医療費に占める喘息治療費の割合は著しく減少することが予測される。
その他のインパクト
本研究で策定した喘息早期診断基準は日本アレルギー学会、世界喘息学会北東アジア部会で既に公表したが、今後、日本呼吸器学会、日本医学会シンポジウム等の公的な場で発表していくことが決まっている。それと同時に、主任、分担の8研究者が、各地で喘息の診断・治療についての講演会を行う際には、この基準案を提示し一般医師に対する啓蒙活動も行う。また、慢性の咳など、一見喘息と思われない症状の時でも喘息の始まりである可能性があることを市民講座、医師会生涯教育講座などで訴えていく予定である。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
62件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
53件
学会発表(国際学会等)
39件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Masuda H, Manaka T, Masao Toda, et al.
Antigen challenge-induced expression of amphiregulin by mast cells increases goblet-cell hyperplasia in a mouse model of asthma.
Dokkyo J Med Sci , 33 (1) , 43-53  (2006)
原著論文2
Sagara H, Okumura S, Fukuda T et al.
FcεRI-mediated amphiregulin production by human mast cells increases mucin gene expression in epithelial cells
J Allergy Clin Immunol , 15 (2) , 272-279  (2005)
原著論文3
Takatori H, Nakajima H, Hirose K, et al.
Indispensable role of Stat5a in Stat6-independent Th2 cell differentiation and allergic airway inflammation.
J Immunol , 174 , 3734-3740  (2005)
原著論文4
Takatori H, Nakajima H, Kagami S-i, et al.
Stat5a inhibits IL-12-induced Th1 cell differentiation through the induction of SOCS3 expression.
J Immunol , 174 , 4105-4112  (2005)
原著論文5
Ikeda K, Nakajima H, Suzuki K, et al.
Stat5a is essential for the proliferation and survival of murine mast cells.
Int Arch Allergy Immunol , 137 , 45-50  (2005)
原著論文6
Suto A, Nakajima H, Tokumasa N, et al.
Murine plasmacytoid dendritic cells produce IFN-γ upon IL-4 stimulation and inhibit Th2 cell differentiation.
J Immunol , 175 , 5681-5689  (2005)
原著論文7
Tsurikisawa N, Taniguchi M, Saito H, et al.
Treatment of Churg-Strauss syndrome with high-dose intravenous immunoglobulin.
Annals Allergy Asthma Immunol , 92 , 80-87  (2004)
原著論文8
Saito J et al.
Exhaled nitric oxide as a marker of airway inflammation for an epidemiologic study in school children.
J Allergy Clin Immunol , 114 , 512-516  (2004)
原著論文9
Niimi A, Matsumoto H, Amitani R, et al.
Effect of short-term treatment with inhaled corticosteroid on airway wall thickening in asthma.
Am J Med , 116 , 725-731  (2004)
原著論文10
Niimi A, Matsumoto H, Takemura, et al.
Clinical assessment of airway remodeling in asthma: utility of computed tomography.
Clin Rev Allergy Immunol , 37 , 45-57  (2004)
原著論文11
Niimi A, Chung KF
Airway inflammation and remodeling changes in patients with chronic cough: do they tell us about the cause of cough?
Pulm Pharmacol Ther , 17 , 441-446  (2004)
原著論文12
Maezawa Y, Nakajima H, Seto Y, et al.
IgE-dependent enhancement of Th2 cell-mediated allergic inflammation in the airways. expression in mast cells.
Clin Exp Immunol , 135 , 12-18  (2004)
原著論文13
Mori Y, Hirose K, Suzuki K, et al.
Tyk2 is essential for IFN-α-induced gene expression in mast cells.
Int Arch Allergy Immunol , 134 , 25-29  (2004)
原著論文14
Minoguchi H, Minoguchi K, Tanaka A, et al.
Cough receptor sensitivity to capsaicin dose not change after allergen bronchoprovocation in allergic asthma.
Thorax , 58 , 19-22  (2003)
原著論文15
Niimi A, Matsumoto H, Takemura M, et al.
Relationship of airway wall thickness to airway sensitivity and airway reactivity in asthma.
Am J Repir Crit Care Med , 168 , 983-988  (2003)
原著論文16
Matsumoto H, Niimi A, Takemura M, et al.
Prognosis of cough variant asthma: a retrospective analysis.
J Asthma  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-